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20本来の婚約
しおりを挟む「リディア様の婚約者は当初シオン殿だったのです」
「はい?」
耳を疑った。
そんな話は初耳だったし、何がどうして私に?
「王家の婚姻は伯爵以上の家柄が望ましかったのです」
「それは解っていますが…」
辺境伯爵は侯爵家以上の家格となる。
ただし裕福だとは限らないが、王家の姫君を嫁に迎える以上はある程度の財産は必要だ。
「十年前にリディア様の婚約者の最有力候補はシオン殿でした。次男であり独立されるならば政治的問題もない。何より大公閣下が望まれました」
「将軍が…」
先代国王の側近でもある。
アントニオ・クレジェンス公爵。
元は平民でありながらも剣術の腕一つでのし上がった人物で現在は国王陛下を支える立場にある。
「リディアは生まれつき体が弱い、王宮で暮らす事も危険だった」
「その為、離宮で過ごさせましたが。リディアは幼少期から聡明でした」
お二人の話曰く、体が弱いので傀儡に出来ると思った馬鹿な貴族の考えに直ぐに気づいたそうだ。
利用できないならば徹底的に痛めつけ毒殺するように仕組んで王宮内を混乱させようとしたが、リディア王女は気丈に振舞われていた。
「ですがリディアは負けませんでしたわ。強くあろうとしました」
皮肉な事に体が弱くとも王女としての矜持が彼女を追い詰める事になった。
「だからこそ私は貴方の事を聞いてました」
「私ですか…」
「ええ、幼少期から騎士として騎士の品格を持っているとアントニオから聞いてました。彼は人を見る目を持った方です。だからこそ貴方を婚約者にと思っていましたが…」
「貴族派が辺境地の貴族と縁を持つのは危険と言ってな」
貴族派は私達辺境貴族を敵視している。
その理由は先々代の国王陛下から信頼され重要な領地を任されて来た。
「リディアに手が出せなくなることを恐れたのでしょう」
「同時に辺境伯爵家の領地をなんとしても削ぎたかったのだろう」
二つの思惑があった。
それ故に貴族派と関りのあるヴィッツ家。
「それだけではありませんわね」
「母上?」
「ヴィッツ伯爵夫人は私に対して意地悪をしたかったのでしょうね」
そこでなぜ母上が出て来るのかと思ったら…
「ヴィッツ伯爵夫人とは同年代でしたわ。貴族院でも同じだったのだけど…」
学生時代は同期だと聞いているが、会えば話をする程度だと聞く。
なのに何故母上に対して対抗意識があったのだろうか。
「女は嫉妬する生き物なのだけど、アスハルト夫人は女性騎士として育ち、さっぱりした性格でしたものね」
「お恥ずかしいですわ」
「そんな貴女に憧れる女性は多かった。だから嫉妬心を抱いたのではなくて?彼女は当時裕福だったヴィッツ家に嫁ぎましたが…伯爵止まりですもの」
「対するアスハルト辺境伯爵は領地を拡大して王家からも信頼が厚い…面白くないだろう」
そんな中王族との婚約の噂を耳にして阻止したかったのか。
なんと短絡的な思考だ。
「リディアとの婚約には相応しくない等と言ながら先手を打たれたのだが…機会を伺っていた」
「でもこうなる前に動くべきだったわ」
拳を突き上げて言われる王妃陛下に冷や汗が流れた。
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