婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

文字の大きさ
上 下
4 / 169

4舞踏会

しおりを挟む




会場まで護衛をした後にライルハルト様はサンドラをエスコートしてくれた。


「貴方は警護があるから結構よ」

「いや…私は」

「察しが悪いわね。殿下をお一人にする気?騎士の癖に察しなさい」


彼女の言う事も一理ある。
だが、その場合は公女様や王族の方々の方が望ましいのだが。


サンドラの父君は文官長の側近だ。
彼女に任せたという事は私が何かを言う権利はない。


「サンドラ嬢、私の事は気にしなくても構わない…」

「どうかお気になさらず。私はどうせ壁の花ですもの…婚約者は警護をしなくてはなりませんし」


いや、そんな頻繁に警護に出ていないんだが。


「ライルハルト様、どうか私の事は気になさらないでください」

「申し訳ない」


「いいえ…」


聡明で控えめな方と聞いているが、少し印象が異なる。
言うべきことはしっかり言う方だと思っていたがもう一つの仮説に気づく。


「ライルハルト様、帝国とは異なりますがどうか楽しんでくださいませ」

「シオン殿…」


私はこの方が嫌いではない。
むしろ好きかもしれないと思い楽しんで欲しいと思った。




「お前馬鹿だろ」

「馬鹿だ!」


置いてきぼりを受けた私は壁の花になっているのを見つかった二人に首根っこを掴まれズルズル引きずられて行く。


「苦しい…」

「何敵にエールを送っているんだよ」

「お前は何時から御者になった?従者に近い扱いを受けてるんじゃない」


既に酒を飲んでいる二人は酔っているな。

「飲み過ぎるなよ」

「シャンパンなんてジュースみたいなものだろ?」


まぁ万一の事を考えて制限しているのだろうけど。
ここまで怒る必要はないだろ。


「あームカつく」

「あの女、見て見ろ」


視線を向けるとサンドラと皇太子殿下がダンスを踊っている。


「婚約者がいる身で安中に体を寄せて…足元がふらついているな」

「ダンスは得意なはずなんだが…」

「お前は馬鹿だろ」


ダンスが得意な彼女が足元がふらつくなんて珍しい。
やはり憧れの人の前では緊張してしまうのではないかと思うのだが。

「クソ!ブランデーだ!」

「ディアッカ、レモンスカッシュで我慢しろ。取って来てやるから」

「シオンのバカヤロー…グスン」

泣く事はないだろうに。


人一倍友達思いの優しいディアッカだからこそなのかもしれない。
甘いケーキも貰ってこよう。

苺のケーキが大好物だからな。



飲み物を取りに行く際中に人が集まっていた。


「何だ?」


気になった私は人混みの中を見ると複数の男が一人の女性を囲んでいた。

「なんて汚い…」

「この場を汚すなんて…」


口元をハンカチで隠しながら今にも嘔吐しそうだった。
真っ青な顔に床にしゃがみ立つ事も出来ない状況で私は仲に割って入った。

「何をしている!」


体調を崩した女性になんて真似を!


「シオン殿!」

「汚いのに近づかない方が…」

「どけ!」

具合が悪い女性になんて真似を。
これでは大勢の前で晒し物にされているのと同じではないか!


しおりを挟む
感想 404

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...