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1身代わり王子に
しおりを挟む一難去ってまた一難。
まさに俺の立場はそういうことになる。
「この度は、どう詫びて良いのか。それで詫びついでに後生だ!」
牢屋から出ることはできた。
だけど更なる厄介ごとが起きてしまった。
「馬鹿息子の代わりに敵国に行ってもらえないだろうか」
「いや、無理ですよ。冷静になりましょう」
正直さっきまではいら立っていた。
馬鹿息子、いや王子の所為で俺は理不尽な扱いを受け、しかも知らない世界に放り出されたのだ。
なのだが――。
原因となる馬鹿王子は問題だけ起こして逃げたそうだ。
「今血眼になって馬鹿息子を探させている。この混乱に乗じて逃亡とは…あの馬鹿はもう息子ではない!」
「陛下!なりません…そのように興奮されては」
「ゲフッ!」
吐血してしまった。
疲れ切った表情に、顔色も悪く。
年齢的にもあの馬鹿王子の父親にしては更けている。
親子というよりも祖父と孫ほど離れていると思ってしまうのは間違いではない。
「無理しない方が…」
「本当に申し訳ない。馬鹿息子の所為で…しかし、貴殿をこのまま王宮で保護するのは難しいのだ。今はようやく停戦状態であるが…命の安全を完璧な形で守れぬ」
「陛下!これ以上はお体が」
側近らしき人が王様を支えるが、困ったことになった。
俺はこのままこの国に留まるのは難しく、かといって身一つで生きていくのは難しいのは解る。
「本来ならば異世界人を保護するのが良いのだが、この度異世界召喚をしたことは大国にも知られておる。故にその異世界人を逃げ出した馬鹿息子の代わりにとある国にと」
「ようするにお嫁に行けと?」
「あながち間違いではありませんが…」
男の場合でもお嫁になるのかな?
なんてのんきな事を考えていたのだが、これまずくないか?
「あの、陛下…体がしんどいなら座ってください。温かくした方が」
「すまぬ。私は鬼畜外道な真似をしているというのに、貴殿はなんと慈悲深い事か」
「いや、目の前で具合悪そうな人がいたら普通ですよ」
俺は基本、病人や老人に無体を働くほど酷い人気なつもりはない。
ただしあの王子は別だけどな!
そうあの王子は許さないけど!
「俺はこのまま貴方の息子の身代わりに敵国に行くんですか」
「恐らくそうなるであろう…しかし、隣国アルテリア王国には事情をきちんと話してある。あちらの女王陛下はお優しい方故に…貴殿の立場を知りながらも好意的だ」
「女王陛下?君主は女性ですか」
「正確にはアルテリア王国の国王は入り婿だ」
聞けば、この世界の大国である大帝国は女性が君主であるが、女性が君主なのは珍しいそうだ。
異世界って言ってもかなり昔の中世ヨーロッパのようなものか?
未だに世界観がまだ把握できない俺だったが、今は世界観よりも俺の処遇だ。
聞けば、戦後未だに荒れ放題の国が多い。
そんな中に各国に停戦の話を持ち掛けたのが大帝国と呼ばれる国だそうだ。
その国の聖女様が国同士の戦争を回避すべく国同士の政略結婚を行うことにしたのだそうだが、その婚約をぶっ壊そうとしたのがあの馬鹿王子らしい。
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