3 / 6
③
しおりを挟む「馬鹿者!」
狭い牢屋も崩壊する程の声だった。
思わず耳を塞ぎたくなった俺は薄暗い牢屋でようやくその人の顔を見た。
「この度は我が国の問題に巻き込んでしまい真に申し訳ありません。怒りはごもっとも、許されるなら腹を切る所存です」
「ラストサムライだ」
これはまさしくあれだな。
じいちゃんが好きだったあの映画だ。
時代劇大好きなじいちゃんの好きそうな人だ。
「あの…頭を上げてくれませんか」
「しかし…この馬鹿が貴方に無礼を働いたのは事実。これらは早々にさらし首にしなくては」
「待ってください団長・・・」
「黙らんか!貴様らは何所まで人でなしなのだ!」
自分達の非をまるで認めようとしたない男二人は納得していないのだ。
「第一、私があずかり知らぬ場所で異世界人をこのような拷問にかけるとは誰かが命じた」
「殿下の指示で…」
「貴様らは何所まで馬鹿なのだ。殿下が命じたとしても教皇猊下、国王陛下の許可なく許されるか!陛下は監視下に置くと言われたが監禁しろとは言っておらぬわ!」
「え?そうなの?」
あの後俺が聖女ではないと知った時、周りの人は落胆、怒りの表情がひしひしと伝わった。
しかも俺を偽物呼ばわりしたあの男は俺を牢にぶち込めと命じたのだが、王様の命令ではなかったようだ。
「しかしこれは…」
「これ?この方だろうが!異世界の人間を巻き込んだあげく貴様らは蔑んだのか!何様だ!」
話が前に進まない。
とりあえずこの場で殺されることはないようだ。
「鍵を出せ」
「ですが…」
「そうか、ならば致し方ない」
すぐにでも俺を出そうと試みる騎士さんは牢屋に触れた。
もしかしてこの人…
いやいや気のせいですよね?
そんな力技で押すような真似をするはずがないと思ったが。
「三歩後ろに下がってください」
本気だ。
俺は逆らうこともできず三歩後ろに下がった瞬間、騎士さんは力の限り牢屋をぶち破った。
「どうぞお出になってください」
「はっ…はぁ」
手を差し出された俺はその手を掴んだ。
いやいや、これってさ。
女の子がときめくだろうが俺は男だ。
なんだかな。
こんなことを思うの騎士さんに失礼だけど。
「傷人ずつない手ですな…」
「は?」
「貴族…いや王族の方でしょうか」
何か誤解をされている。
確かに実家はそこそこ裕福だがおお金持ちというわけではない。
ないのだが、騎士さんは何故か俺に礼を尽くしたのだった。
この後俺はどうなるのだろうか。
92
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる