54 / 55
第二章
24.没落した男爵家②
しおりを挟むアマンダは父親から伯爵以上の裕福な貴族と婚姻関係を結べと命じていた。
美しい容姿にのアマンダならば、貴族の令息を誘惑する事は簡単だろうと考えていた。
だが、父親も元は平民で男爵家に婿養子に入った身故に、貴族社会の本当の恐ろしさを知らなかった。
甘い汁だけ吸って成り上がっても、長続きはせず。
失脚した後も持ち直す為に必要な人脈づくりなんてしていなかったし、一番の落ち度は商業ギルドを敵に回した事だった。
貴族達にとっても商業ギルドは無暗に手を出していい存在ではない。
法律ではギルド職員や職人達に手を出すことは禁じられており、法を犯した者は重い罰を受けるが、一番の痛手は商売がせきでなくなることだった。
多くの貴族の中で資産家は、商業ギルドの協力により成り立っていた。
彼等を粗末に扱うことは、商売に影響ができるのだった。
特に下級貴族にとってはかなりの痛手だった。
「お前がこんな屑を誘惑などしなければ…こんな貧乏貴族を!」
「私だって知らなかったのよ!伯爵家でお金を持っていたし…邸だってそこそこ立派だったから伯爵夫人になって高位貴族の愛人になって王太子様の公妾になるつもりだったのに!」
「アマンダ…お前は…」
「何よ?あんた程度の男なんてそれぐらいしか利用価値がないわ」
さらに追い打ちをかけるアマンダに絶望するローガスは、言い返す気力もなかった。
既に自分の出自を教えられ、父親にも勘当されてしまって、頼みの綱の母親の実家からは門前払いを受けていた。
元から家族とは疎遠だったので勘当されたも同然だった。
特に、傲慢な態度のラリサを忌み嫌っていた事もあるが、ローガスも母親と一緒になって上から目線で見下していた。
ずっと他者を見下し、自分は優れた選ばれた存在だと思っていた。
なのに今度は自分が見下され、価値がないと罵倒されるとは夢にも思わなかった。
「こんな魅力もなく自尊心の欠片だけの無能な男に付き合って時間と労力を無駄にしたわ!慰謝料を欲しいのは私よこれなら、侯爵様を誘惑すれば良かったわ」
「アマンダ…」
「馴れ馴れしく呼びしてにしないでくれる!」
か細い声で名前を呼ぶも、虫けらを見るような目をしながらアマンダは出て行った。
「何所に行くんだ!」
「こんな家にいても惨めな一生を終えるだけよ。私はこんな惨めな終わり方をするような人間じゃないわ!」
荷物を持って家を出て行ったアマンダを父親はイライラしながらも止めることはなかった。
これまで何の不自由もなく生きて来たアマンダが一人で生きていけるはずがない。
道端で野垂れ死ぬだろうと思ったが、心配もしなかった。
いい意味でもも悪い意味でも二人は似た者親子だった。
そして次なる標的は――。
「何時までしゃがんでいる気だ!とっとと働け」
「えっ…」
「何を呆けた表情をしている。貴様はこれから私の為に働いてもらうからな!」
残されたローガスがアマンダの身代わりとなるのだった。
既にお金は底をつき借金まみれだったので、アマンダに働かせようと目論んでいたが、ローガスでも良いと思い、夜の街で働かせ稼ごうと考えた。
運が良ければ未亡人の情夫にでもして搾取しようとも考えていたのだが、世の中は甘くなく。
詐欺に騙され続けたアマンダの父親は法を犯すような真似をしてしまい、牢獄行となり。
夜の店で働くも、失敗続きで店を追い出されてしまった。
最終的に雇われたのは鉱山での重労働で一生を過ごす羽目になり、ラリサは掃除婦として一生奉公をしながら働かされることとなった。
勿論給料はなく、与えられる食事は平民の中でも最低なものだった。
22
お気に入りに追加
2,837
あなたにおすすめの小説
すれちがい、かんちがい、のち、両思い
やなぎ怜
恋愛
占術に支配された国で、ローザが恋する相手であり幼馴染でもあるガーネットは、学生ながら凄腕の占術師として名を馳せている。あるとき、占術の結果によって、ローザは優秀なガーネットの子供を産むのに最適の女性とされる。幼馴染ゆえに、ガーネットの初恋の相手までもを知っているローザは、彼の心は自分にはないと思い込む。一方ガーネットは、ローザとの幸せな未来のために馬車馬のごとく働くが、その多忙ぶりがまたふたりをすれ違わせて――。
※やや後ろ向き主人公。
※18歳未満の登場人物の性交渉をにおわせる表現があります。
婚約者が最凶すぎて困っています
白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。
そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。
最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。
*幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。
*不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。
*カクヨム。小説家になろうにも投稿。
虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カチュアは返事しなかった。
いや、返事することができなかった。
下手に返事すれば、歯や鼻の骨が折れるほどなぐられるのだ。
その表現も正しくはない。
返事をしなくて殴られる。
何をどうしようと、何もしなくても、殴る蹴るの暴行を受けるのだ。
マクリンナット公爵家の長女カチュアは、両親から激しい虐待を受けて育った。
とは言っても、母親は血のつながった実の母親ではない。
今の母親は後妻で、公爵ルイスを誑かし、カチュアの実母ミレーナを毒殺して、公爵夫人の座を手に入れていた。
そんな極悪非道なネーラが後妻に入って、カチュアが殺されずにすんでいるのは、ネーラの加虐心を満たすためだけだった。
食事を与えずに餓えで苛み、使用人以下の乞食のような服しか与えずに使用人と共に嘲笑い、躾という言い訳の元に死ぬ直前まで暴行を繰り返していた。
王宮などに連れて行かなければいけない場合だけ、治癒魔法で体裁を整え、屋敷に戻ればまた死の直前まで暴行を加えていた。
無限地獄のような生活が、ネーラが後妻に入ってから続いていた。
何度か自殺を図ったが、死ぬことも許されなかった。
そんな虐待を、実の父親であるマクリンナット公爵ルイスは、酒を飲みながらニタニタと笑いながら見ていた。
だがそんあ生き地獄も終わるときがやってきた。
マクリンナット公爵家どころか、リングストン王国全体を圧迫する獣人の強国ウィントン大公国が、リングストン王国一の美女マクリンナット公爵令嬢アメリアを嫁によこせと言ってきたのだ。
だが極悪非道なネーラが、そのような条件を受け入れるはずがなかった。
カチュアとは真逆に、舐めるように可愛がり、好き勝手我儘放題に育てた、ネーラそっくりの極悪非道に育った実の娘、アメリアを手放すはずがなかったのだ。
ネーラはカチュアを身代わりに送り込むことにした。
絶対にカチュアであることを明かせないように、いや、何のしゃべれないように、舌を切り取ってしまったのだ。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
婚約破棄されて田舎に飛ばされたのでモフモフと一緒にショコラカフェを開きました
碓氷唯
恋愛
公爵令嬢のシェイラは王太子に婚約破棄され、前世の記憶を思い出す。前世では両親を亡くしていて、モフモフの猫と暮らしながらチョコレートのお菓子を作るのが好きだったが、この世界ではチョコレートはデザートの横に適当に添えられている、ただの「飾りつけ」という扱いだった。しかも板チョコがでーんと置いてあるだけ。え? ひどすぎません? どうしてチョコレートのお菓子が存在しないの? なら、私が作ってやる! モフモフ猫の獣人と共にショコラカフェを開き、不思議な力で人々と獣人を救いつつ、モフモフとチョコレートを堪能する話。この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる