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第二章

22.敵には容赦なし

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公爵家にて、花嫁修業を行い早二週間。
元から優秀だったフレデリカは、スポンジの如く作法や知識を吸収していた。


これから王族の一員になる上で、あらゆる危険と隣り合わせになるの。
その為には己の身は己で守る必要があったのだが、今まで下級貴族であることで陰湿な嫌がらせを受けていたので動じることはなかった。


例えばお茶会では――。


「さぁ、本日は特別な紅茶を揃えましたのよ。是非お飲みになって」

ニコニコと人の良い笑顔を浮かべるのは、王宮の出入りを許されている伯爵家の娘だった。
そなりの財と地位を持っており、今回のお茶会ではホスト役を任されていたのだが、カップに注がれた紅茶は明らかに腐っていた。


「私達は既にいただきましたの」

「ですから、貴女がお飲みになってくださいな」

「我がシュウィン家の自慢の茶葉ですのよ」


ここにいる令嬢は全員そろって飲めない紅茶を用意していた。
飲んだとしても腐っており、味は酷く嘔吐するのは明白だったが断れば後からあらぬ憶測を生み、飲んだとしても、陰湿な嫌がらせと噂を流されるのは明白だった。


「クスクス…」

「いい気味ですわ」

ニヤニヤ笑う令嬢達だったが、フレデリカはこの程度の嫌がらせで泣くような繊細な神経は持ち合わせていない。

「あら?口当たりがすっきりして美味しゅうございますわ。この紅茶はミルクよりもレモンの方が相性がいいみたいですわね」

「はっ?」

「この紅茶は香りが独特でしたが、バムゥール茶はレモンを入れることで味が変わります。渋すぎる味や、癖のある甘みも抑えられるんです…そう、味を変えることもね?」


「「「なっ!」」」

遠回しに、紅茶が飲めないように細工している事を言えば真っ赤になる令嬢達は紅茶を飲むも。


「うっ…」

「何ですの!このお茶…うっぷ!」


大声を上げた事で喉が渇いた令嬢達はすっか温くなったバター入りの紅茶を飲むも、バターの油が固まり、紅茶の茶葉の旨味が無くなり飲めたものではなかった。


「どうしましたの?皆様…ご気分でも悪いのですか?」

「どうして…気持ち悪い」

「腐っているんのではなくて!」

「失礼ね!腐っているのはこの女の紅茶の茶葉だけよ…あ!」


自分で墓穴を掘って自滅する令嬢はお茶会の席でその後爪はじきに合ってしまった。


「フッ、ちょろいですわね」

「フレデリカ!なんて恐ろしいんだ!」

「私のモットーは清く正しく美しくですわ」

「何所が清いんだよ!恐ろしくえげつなくだろうが!」


やられたら倍返しを心掛けながらも優雅に振舞う事を忘れないフレデリカは婚約期間中に嫌がらせをする令嬢を自力で黙らせ、一時は馬鹿にしていた彼女達は顔を見るだけで道を開けるようになっていた。


母代わりを務めるエルダはというと…


「流石私の義娘ですわ。私も若い頃は嫌がらせをする令嬢にわざと転ばされて、逆に慰謝料をふんだくった後に社交界から追放してやりましたのよ!」

「母上、もうやめてぇぇぇ!これ以上は聞きたくありません!」

母の武勇伝を聞かされ、シクシク泣くヴィクトールはある意味一番哀れだった。


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