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第二章

20.公爵家

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紆余曲折を得て幸福な婚約をした後に結婚が正式に認められたフレデリカは現在公爵家にいた。


「お待ちしていましたわ。フレデリカ様」

「ご無沙汰しております。公爵夫人」

「嫌ですわ。他人行儀です事。貴女は私の義娘になるのですから」


穏やかに微笑むアルタイル公爵夫人は、ヴィクトールの母親だった。
妙齢の子息を持つ母親とは思えない程若々しく感じられた。


「母上、あまり強引だと逃げられ…うっ!」

「お黙りなさい。全く、何時まで経ってもフラフラして…いい加減母を安心させる気はないのですか?私が元気なうちに孫を見せない気ですの?」

「母上は百年過ぎても元気だと思いますよ」

「そうですか、再教育が必要のようですわね」


聖母のような表情から一変して魔女のような表情に変わり、ヴィクトールは顔を引きつらせた。


「さぁ、お入りになって」

「ありがとうございます」


ヴィクトールを睨みながらも、フレデリカの手を引き部屋に案内する。


「我が家に養女に迎え、公爵令嬢となったのに正式に嫁げば誰も文句は言えませんわ。アレンゼル家とは親族ですし、アルタイル公爵家…いいえ、王の妹である私に喧嘩を売るなんてそう簡単にはできませんもの」


アルタイル公爵夫人であり元王女殿下でもあるエルダは王の補佐的な役目を担っている。
王から溺愛されている事からエルダに喧嘩を売る行為は王への侮辱に近しいので、簡単に手を出せなかった。


「未だに納得していないものが多いのです。馬鹿な輩が結婚式前に妙な気を起させないようにしなくてはなりませんわ」

「ご配慮いただきありがとうございます」

「それに私に母代わりの役目を任せてくれた彼には感謝してますのよ。息子はこの通りの甲斐性無しですし」


視線を逸らせるヴィクトールは何も言えなかった。


「結婚式までの間、作法は私にお任せください。大事な侯爵夫人なのですから」

「よろしくお願いします」


少しばかりプレッシャーを感じながらも結婚式までの期間は花嫁修業の指導を行われるのだった。


その指導は扱きに近く、我慢強いフレデリカも心折れそうになるほど厳しかった。


「本が崩れてますわよ!美しく軽やかに、滑るように!」

「はっ…はい!」

「視線を下げるのでありません。侯爵夫人たるもの常に気品と威厳を持ちなさい!」


かなりのスパルタだった。

「うわぁー、鬼だ。悪魔だ」

実の母の恐ろしい程のスパルタ教育はヴィクトールもトラウマになっていたが、マナーレッスンは礼儀作法だけでとどまらず、剣術、馬術にまでも仕込まれていた。



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