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第二章
12.閉じられた扉
しおりを挟む自らの行為で破滅に向かったローガスは自業自得と言えるだろう。
エスカル家はその後、多額の借金を背負うだけでなく、それまで親しくしてくれた貴族達から見捨てられてしまった。
貴族社会では僅かな噂でも命取りになる。
ローガスの態度は目に余るものがあれど便乗していた貴族もいたが、彼等は思うよりも薄情でゲンキンだった。
自分達の身が危ないとなれば知らないふりをするのだ。
しかし、ローガスは諦めなかった。
学生時代からの友人や、社交界で親しくしていた貴族達を頼るも邸の前で門前払いになった。
「申し訳ありませんがお帰りください。主に合わせるわけには行きません」
「待ってくれ、話だけでも!」
「お帰りください、主人は来客中なのです」
使用人が必死でローガスを止めに入る。
少し前までは快く邸に入れられていたのに、汚い物を見る様な目をしていた。
「頼る相手を間違えておられますよ。貴女もヴィッツ男爵令嬢も…いい加減にしてください」
「何?アマンダも来ていたのか?」
「ええ、とても非常識な言葉を叫びながら旦那様の名誉を傷つけました。社交界で数回あっただけなのに…旦那様に図々しいお願いをしてこられました」
アマンダが訪ねて来たのは知らなかったが、何故だと思った。
「ご存じないのですか?ヴィッツ家は現在傾き、商会も潰れてしまっています。金銭的にも困っているようで旦那様にお金を無心しに来られたのです」
「なっ…」
「他の皆様にも貴方様がいらしたら気を付けるように助言をいただいております。社交界では貴方達と関わりたい貴族等いませんでしょうに」
既にローガスの悪評は王都でも有名になっていた。
元より、下級貴族を馬鹿にしていたので商人からの受けは最悪だった。
街に遊びに行く時も傲慢な態度を振舞っていたので、商業ギルドで働くギルドの職員や職人達からは嫌われていた。
特に女性に。
「お帰りください。貴方と関わると侯爵家…いいえ、王族に睨まれます」
「は…王族?」
「今ではルメルシェ子爵令嬢は侯爵閣下の婚約者です。既に貴族令嬢ではございません。ロイヤルファミリーの仲間入りを果たしているのですよ」
「ロイヤルファミリー…」
真っ青な表情をするも、使用人は気にも留めず門を固く閉ざした。
これ以上関わってデメリットしかなく、最悪の場合は王族の怒りを買うことになってしまうと判断していた。
その為、ローガスが邸に入ることを阻止しなくてはなたなかったし、関係を聞かれても社交界で顔を合わしていただけで親しくないと公言していたのだった。
「待ってくれ!俺は…」
閉じられた扉をドンドン叩くも、あまりにもしつこい故に警備隊を呼び、ローガスは拘束されることになるのだった。
後に、社交界ではローガスの愚かな行為が酒のつまみにされていたとか。
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