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第二章
10.馬鹿すぎ発言
しおりを挟む貴族社会では女性が身分の高い男性に嫁ぐことが誉れだった。
エスカル家は伯爵家で、ルメルシェ家は子爵家なので家格から言えば差が大きかった。
伯爵家以下は未だに平民の成り上がりだと言われているので、差別も大きかったのが前時代的な思考を持つ貴族の考えだった。
しかし新時代を生き抜く者達は口を揃えて言う。
家柄だけの時代は終わったのだと。
現国王も同様に、家柄だけを重視することはしなかった。
血筋は必要だが、教養や財力に改革する際がなければ国は滅びてしまう。
何より、国の九割は国民なのだから。
既に血筋だけで威張っているだけの貴族は衰退しており、エスカル家も同様だった。
「何故解らんのだ、フレデリカ嬢程の聡明な令嬢が貴様に嫁いできてくれたのか」
「それは我が伯爵の名が欲しかったのでしょう。浅ましい平民上がりが考える事です。子爵しか賜れなかったのですから」
「馬鹿者が!その逆だ…ルメルシェ子爵が望めば侯爵の地位も陛下から賜れたわ!」
「は?」
もう殴る気すら起きなかった。
「お前も知っておろう。愚王と呼ばれた時代を」
「はい…思慮に欠けた先代国王が無茶な戦争ばかりして国が荒れ、終戦になった後に金がなく停戦条約の際に敵国に支払う金がないと…それでどこぞの商人に金を借りたとか」
「そうだ。当時の国王陛下が王太子殿下だった頃に先代国王の命令で金を借りた商人は国への寄付と言って返済も必要ないと全財産を投げうったのだ」
「馬鹿のすることです。大方、恩を売りたかったのでしょう…」
「その人物こそがフレデリカ嬢の祖父だ!」
「はぁ!」
「あげく、その後事業を立ち上げる大成功をしたそうだ!補足すると後の陛下は、大変感謝したそうだ。その見返りに爵位と領地を与える話や、王族との縁組も持ち上がったがすべて断った…爵位は金で買ったのではない!すべて彼等の功績だ…子爵など低すぎるぐらいだ!」
「じゃっ…じゃあ」
今になって恐ろしくなった。
公の場でフレデリカを罵倒したローガスの目には自分を見下すような貴族や商人達の目。
「貴様は国王陛下の恩人を侮辱し、この伯爵家を没落に導いたのだ。こうなっては我が家はおしまいだ!」
「なら、今から取り消せば…そうです。婚約破棄を破棄すればいいのです。フレデリカとて泣いて喜ぶはず・・」
「そんなわけないだろう!お前は本当に馬鹿だな…婚約期間中に散々無礼をしたのだろう!そんな屑男と再び婚約して喜ぶ女性がいるか!私なら修道院に入ってもごめんだ!」
どうして解らないのだろうか。
それ程の価値が自分にあるなんて自意識過剰過ぎると思うマーカスだった。
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