清く正しく美しくをモットーに生きてます!

ユウ

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第一章

19.敬意の差

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舌が切れる様な後味であってもフレデリカは残さなかった。

前菜に、スープ、魚料理にメインの肉料理を平らげてしまったのに、二人は驚く。


「フレデリカ嬢、無理をしなくても」

「そうです。不味いなら…」

「作ってくださった方への礼儀ですわ」


フレデリカは礼を尽くした。
例え不味かろうとも、コース料理一つ作るのに手間がかかるのだ。


「もったいないわ」

「え?」

「料理人の腕は真面なのに、それだけに惜しい」


料理の味が悪いのは料理人の腕ではなく材料だった。
化学調味料ばかり使わずにいれば、きっと素晴らしい料理ができただろうと思ったのだ。


「フレデリカ嬢は変わっているな」

「ええ…失礼ながら、私も同感です」

普通なら不味い食事を食べさせられて怒って当然なのに敬意を持つフレデリカは変わっていると思ったが、好意を持つ。


「確かに、料理の味は問題だがセンスがないわけではない」

「ええ、見た目は悪くありません。美的センスがありますし」


視点を変えるだけで変わって来る事を教えられる。


「失礼します。お料理はいかがでしょうか」


そんな中、白衣を着た女性が挨拶に現れる。


「こちらの料理は貴女が?」

「はい」

「とても美しい料理だわ。見て楽しめたわ」

「えっ…」

シェフは驚きながらも顔を上げた。

「お客様…」

「でも、デザートに出て来たプディングは見事でしたわ。本当に食べやすく、気に入りました」

どの料理も味は今一つであったがデザートのプリンだけは美味しいと感じた。
他の料理と異なり目が行きにくいが、このプリンこそ主役のように思えたフレデリカは評価した。


「ぶっ…これだから味の解らない成金は」

「まさか、デザートのプリンしか味が解らないとはとんだ味音痴ですこと」


そこに聞きなれた声が聞こえ、フレデリカは眉を顰めた。


「所詮は、物の良しあしも解らないような愚か者だ。アマンダのような教養もないのだからな」

「まぁ、子爵家はまともな食事もしたことがないのですね?お可哀そうです事」


ローガスとアマンダは派手な装いで姿を見せ、これみよがしにフレデリカを馬鹿にした。


「汚い老人と、冴えない男性を連れるなんて…貴女、真面な友人がないのかしら?」

「この店に相応しくない客が来ているとウェイトレスが騒いでいたが…一応客だから追い出すような真似はしないが。この店には貧乏人は不要だ。二度とこないでもらおうか…店の質が落ちる。特にそこの頭の悪そうな男はな!」

「なっ!」


フレデリカは、自分のことならばまだ許せた。

しかし、ヴァルトラーナとロジャーの事を悪く言うのは許せなかった。


「私も二度と来る気はない」

「ええ、ご安心ください。二度とこの店の敷居をまたぎませんのでご安心を」


咄嗟にヴァルトラーナはフレデリカの手を握った。
まるで相手にするなと制止されているようだったので、何も言えなかった。


「ハッ、所詮は平民上がりの貴族だ。服飾品が売れたのもまぐれだ。お前のような下品な商品が売れているのも、物の価値が解らない客が多いからだ」

「もし、よろしければアドバイスさせていただきますわよ?」

「アマンダ、止めて置け。君の評価にも影響が出るだろう…こんな女に」


ここがレストランだと言うことも忘れて言いたい放題を言う二人。
フレデリカは決して感情的になることがないのは、食事を楽しむ場所で騒ぎを起こすことを良しとしないからだった。


「まったく、お前のような価値のない金蔓でしかない女と結婚しなくてはならないとは…」

「いいのよ、ローガス。私は貴方の愛さえあればそれで」


「いや、アマンダを日陰にする気はない。この場ではっきり言おう…フレデリカ!お前と私では釣り合っていない。身の程を弁えろ…アマンダを嫉妬する等無礼にも程がある」

どっちが無礼なのか解った物ではないが、フレデリカは何も言わなかった。
言う気ですら怒らないし、自分達が何をしているかも全く理解していないのだから。


「ローガス、そこまで言っては可哀そうですわ。人には向き不向きがあるのですから」

「ああ、アマンダ。君は何処までも優しいんだ。まるで聖女のようだな」


「そうですか、では私達は失礼しましょう」

くだらない茶番劇を見せられたフレデリカは時間の無駄だと思いその場を後にした。
二人は既に自分達に酔いしれ、周りがまるで見えていなかった。


食事をしていた客達も二人を冷めた目で見たのに気づく事はなかった。

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