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第一章

16.問題の店

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無謀ともいえる賭けに身を乗り出したフレデリカに、セシルは邸に帰った後も怒っていた。

「姉さん、無茶だよ」

「そうね、料理勝負まで時間がないものね」


セシルが怒るのは無茶だと承知していたが、引き下がるわけには行かない。
サン・マルシェは王室御用達のレストランでもあるのだから。

「王妃陛下のお顔に泥を塗るわけには行かないでしょ?」

「だけど…」

「それに気になるの。他の店がソースの味を盗むなんて芸当を簡単にできるのかしら?」

料理人であれがある程度の味を真似ることは着出る。
けれど、その場合はちゃんと許可を取らなくてはならないのだから。


「問題の店を調べる必要があるわ」

「姉さん…」

既に、セシルが説得してどうにかなる問題ではない。
フレデリカは、マーシャルの店を救うべく対策を行うつもりでいた。


「まずは下調べをしましょう」


フレデリカは直ぐにブロッサム商会の従業員に協力してもらい、例のレストランに探りを入れてもらった。



そして調査を進めるにつれて解った事がある。
レストランにローガスとアマンダが関わっている事が解った。


「あの二人が始めた事業?」

「はい、調査したのですが、あの二人は新しい商会を立ち上げるべく、王都内にレストランを立ってたとか。立てたと言っても、元々経営状況の悪いレストランの権利を奪ったとか」

「一から建てるより楽でしょうね」


アマンダの実家は男爵であるが、実績がまだ少ない。
この先大商会に並び立つ為に目を付けたのが、経営が芳しくないレストランだった。

「経営にローガスも加担しているそうです」

「資金はどうしているの…って聞くまでもないわね」

恐らく、勝手に実家のお金を使っているか。
それとも出入りしている商人にそそのかされたか、あるいはお金を何処からか借りているのかもしれない。


(後者でないことを願うわね…)

万一そんなことになれば、借金のしわ寄せが来るのはフレデリカなのは明白だった。


「ギルド長とガブリエラ様には?」

「聞けばソースのレシピはオリジナルだとの事です」

「オリジナルね?」

口ではなんとでも言える。
真面な舌を持つ者ならばすぐに解るだろうが…



「やはり食べに行く必要がありそうね」

「やっぱり行くの?二人が共同でしている店に行ったらアメンボに嫌味を言われるよ」

「セシル。アマンダよ?アメンボじゃないわ」

「どっちでもいいよ」


既にアマンダをアメンボ扱いをするセシルは名前を覚える気はまったくなさそうだった。


そして決行日。
普段よりもお洒落をして問題のレストランに向かっていた。


「お嬢様、そろそろ到着します」

「ええ、ありがとう」


馬車から降りて、店の前に向かおうとした時だった。


「フレデリカ嬢?」

背後から誰かに声をかけられ、振り向くと…



馬車に乗ったヴァルトラーナに声をかけられた。


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