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5木登り

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お茶会の場を抜け出したリゼットはエリーの手を引き木登りをする。


「エリー手を」

「うむ」


領地では木登りなんて日常茶飯事だった。
エリーの手を引きながら落ちないように支えながら登り終える。


「ここでお菓子を食べましょう」

「さっき食べたではないか」

「あんなの味がしません」

お茶会で出された紅茶は味がしなかった。
お菓子にかんしてもすぐに食べないから味が悪くなっている。


「こっちの果物の方が美味しいですよ」

「むっ…ナイフはないのか?フォークは何所だ」

「そのまま食べるんですよ」

困惑する中柑橘系の香りがする。
リゼットは隠し持っていた果物の皮をむいて差し出す。

「これはオレンジか?」

「蜜柑です」

「みか…」


オレンジよりも小さく柔らかい果物に困惑するも。
目の前で美味しそうに食べるリゼットを見て手を伸ばす。

「何だ!甘いぞ」

「美味しいでしょ?こっちはイチジクです」

「なんかグロテスクだな」

手で割ったイチジクは少しグロテスクに見えたが口に入れるとエリーは目を輝かせた。


「美味い…美味いぞ!うちのパティシエの作るスイーツよりもずっと美味い!」

「エリーは専属のパティシェがいるんだ…すごいな」


貴族の中でもお抱えのパティシエがいるのは一部だけだ。
王族の中でもかなりの財産を持つものだけなのだ。


(かなりのお金持ちなのかな…)


世間知らずなのは同じだが、箱入り娘のようだと感じたリゼットはもしかしたらお邸から出たことがないお嬢様なのかもしれないと思ったのだ。



「こんなおいしい果物があるんだな」

「領地ならたくさんありますよ。この蜜柑は領地の子供たちが毎日食べるんですよ」

「毎日だと…しかも領民がか?」

「はい、ジュースにしたりとか」


リゼットは知らなかった。
他所の領地では新鮮な果物を口にできるのは限られた貴族と商人ぐらいだ。

果物をジュースにして飲めるのは王族でも限られた身分だけだということを。

「果物食べたら、なんか塩辛いのが食べたい」

「むっ…そうだな」


少し小腹がすいたと思う中、リゼットは隠しておいたずた袋から取り出したそれを差し出す。

「何だこれは」

「おにぎりです」


大きな葉っぱにくるまれたおにぎりをまじまじと見つける。

「お茶もどうぞ」

「これは東洋の木か?」

「竹です」


見るものすべてが珍しいエリーはどうやって飲むのかと考えると。

「飲み口があります」

もう一つの竹の水筒を取り出しやってみせると。

「なんだか香ばしい香りが」

「ほうじ茶です」

「ほうじ…」


聞いたことがないお茶に驚くも一口飲むと最初は苦みが強かったが清々しい気分だった。


(味がする…)


口の中に広がる苦みは嫌いではなかった。
むしろ好きかもしれないと思ったほどだったのだ。





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