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第四章

19.怒りの鎮静

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一度噛みつくと話さないウーパン。
彼は不審者や気に入らない者に噛みつくのだった。


「どうなっているの?」

「少々仕掛けをさせていただきました」


現れたのはディーンや竜騎士の面々だった。

「あの馬鹿者は、我が帝国の霊廟に侵入しました」

「は?」

「あの男は我が帝国を乗っとるつもりで最初からそのつもりだったのです。そうですね?ルーカス殿」

「へ?お兄様?」

ルーカスがいた事に気づき驚く。


「内々で来ていただ来ました。それよりも陛下の怒りを鎮めないと、本当に宮廷が壊れてしまいます」


「ちなみに先ほどの暴言は録音済みですわよ」

「うむ、これで奴らは逃げられまい」


アンジェはロイドを追い詰めるべく水晶玉を取り出した。
音声と映像を録音できる魔道具だった。


(まさか、最初からそのつもりで…)


ロイドとゾフィスを招待した理由は、二人を破滅させる為だったのかと察した。


「リリアーナ様、お急ぎください」

「はい」


怒りが爆発する寸前のイサラは既に本来の姿に戻りロイドを絞め殺す寸前だった。


「陛下、陛下」

「グルルゥー…」

呻き声をが聞こえるが気にせず、近づき声をかける。


「陛下、そんなお顔は似合いません」

「ガルルゥー!」

拒絶を示すもリリアーナはイサラの逆鱗を撫でる。

「何をしている!馬鹿か!」

竜の逆鱗を触ると理性を失い大暴れをすると言われているが、リリアーナはマッサージをしていた。


「興奮しないでくださいね。大丈夫ですよ」


「グルゥー…」

「そうそう、落ち着いてください」


魔獣の扱いが上手いので竜も扱いが上手かった。
まるで猫のように大人しくなるイサラは人型に戻っている。


「僕の白百合」

「陛下、無暗に怒って、暴れないでください」

「うん、ごめんね?」


イサラの手を離すまいとしっかり握りしめる。


例え何度もイサラが怒りで我を忘れても、リリアーナは何度も止めて見せる。

人間で、竜のように強くない。
治癒と結界しか敷けない役立たずと言われても、大切にしてくれるイサラがいる・


「メイデン様、私は役立たずでしょう。貴方の言う通り、聖女にも慣れず、戦闘民族でありながらも弱く使えません。ですが、それでいいのです」

「何?」

「いずれ、陛下が私を不要となる日が来たとしても、私は陛下に食べられても構いません。私は陛下が大好きです。そしてこの国が好きです。クリステリアの礎になれるならば幸せです」

綺麗ごとでも、自己犠牲でもない。

心からの願いだった。

「優しい竜帝陛下、そして誇り高い竜騎士に、美しくも強い女官達。私の幸福はここにあります。だからいまのままでかまいません。皇后としてここで生きてくのが私の幸せです」


曇りのない表情ではっきりと告げた言葉。

幼くとも皇后としての振る舞いをするリリアーナに誰もが見惚れていた。



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