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第四章
14.悪化の予感
しおりを挟むまさかとは思ったが、こんな馬鹿な真似をするとは思わなかった。
(何故?)
手紙の一件もそうだが、自殺願望でもあるのだろうか。
式典に参加している国の貴賓は他国にも影響力が強く、敵に回せないような人物ばかりだ。
特にケルアニア国は宗教を大事にする国故に、女子供を大切にする国でもある。
一夫一妻制を貫き、戦争を反対する平和の国とも呼ばれる一方で敵に回せばどんな目に合うか。
ウィンドル王国の聖職者も、ケルアニア国の宗教から教えを学ぶ者は多いのだ。
彼等を怒らせれば聖職者として生きていくことはできないことも、同行しているゾフィスも知らないわけじゃない。
(ありえないわ…何を考えているの!)
リリアーナは幼少期から聖書を大切にし、信仰心が強かった故に、ケルニア文化を学んでいた。
戦争しない国というのは弱いわけではなく、国を守る力を持っているのだ。
「なんて事を」
「現在は、竜騎士が抑え込んでいるのですが…しきりに皇后陛下を出せと」
これ以上聞いていられない。
頭が痛くなることばかりするロイドをどうしたものか。
「何て事なの」
「やはり馬鹿は一度死なないと治らないようじゃな」
アンジェとリデルは心底軽蔑するような表情をしていた。
「それで、その馬鹿はどうしてますの?」
「王女殿下…」
「ええ、その馬鹿…いえ、メイデン様はレン様が」
「は?レンがどうしたのじゃ!」
リデルが目の色を変えて身を乗り出した。
「はい、収拾がつかずにおりましたので、レン様が対応してくださっています。あのまま放置すれば乱闘になりかねないと仰せられて」
「あの阿呆が!喧嘩もできぬヘタレドラゴンがなんて馬鹿な事を!」
リデルはいてもたってもいられず、立ち上がった。
「お待ちくださいリデル姫!行けませんわ…あの馬鹿が万一にでもリデル姫に手を上げれば」
「しかし、いくらこそまで…」
「皇后陛下、馬鹿は何処まで行っても馬鹿です。ああいう馬鹿は自制なんてしません。この際、闇に投じるのも良いかと」
「そうね、その方が良いわ」
「二人共…」
既に始末する方向で進んでいる。
しかしどんな馬鹿でどうしようもない男でも一応王族の親族に当たるのだ。
万一の事があればウィンドル王国の国王と王妃が悲しむのではないかと思ったが…
ガシャン!
「何の音ですの?」
「この音は…ロッテンマリアが」
「ええ、ロッテンマリア様がついに切れましたね」
既に修復は不可能な事態にまで進んでいたのだった。
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