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第四章
6.ジワジワ攻める
しおりを挟む程なくして、客人の元にイサラとリリアーナが現れた。
「この度は遠路遥々とよく来てくれた」
「誠にありがとうございます」
イサラにエスコートされながら純白のドレスで登場するリリアーナの姿に誰もが見惚れた。
幼さは残るが、美しさが際立ち、肌は真珠のように白く。
対するイサラも聖書に出てくる美男子そのものでお似合いだった。
「誠に美しい」
「暗黒竜とは思えぬほどの気品と慈愛に満ちた表情だな」
「所詮は噂だ…天竜の長となるお方だ」
イサラの悪い噂が勝手に一人歩きをしているだけだと誰もが思った。
「そうじゃ、噂は所詮噂にすぎん。そういえば他国ではこんな噂もあったのぉ?どこぞの貴族のアホが公衆の面前で婚約破棄を告げて一人の貴族令嬢を辱めたとな?」
「なっ!」
「一国の王女としてそのような屑男がいるとは嘆かわしい」
(このクソガキ!)
リデルは不敵な笑みを浮かべながらこれ見よがしにしゃべる。
「ええ、同感ですわ…ですが、我が国もそのような貴族がいるそうなのです。まぁそんな人間は常識もない人間がする事ですわね?」
アンジェが答えるようにロイドを流し目で見ながら話すと、他国の貴賓達がありえないと言う表情をしながら口々に告げる。
「婚約を解消したいならば、ちゃんと手続きをして婚約者に傷がつかぬようにするのが普通だと思うのだが…人間のクズか」
「貴族の婚姻は義務だ。そのような行為は国家反逆罪であろう…まぁ、真面な教育を受けてないならばありえるのか」
深い事情を知らない彼等は口々に言う中。
「男として信じられないね。我が国では政略結婚でもそのような愚かな行為は子供でもしないのだが…どんな男か顔を見てみたいものだ。アンジェ王女、その者はどんな男なのだ?」
「お恥ずかしいながら、思慮が乏しく、多少の血筋はあるのですが…婚約者のご令嬢がまだ成人前で幼いながらに聡明で優れた治癒師でしたの」
「何?成人前だと…なんと下衆な男だ!では14歳未満ではないか!」
「娘を持つ身としては不愉快だ。もし私の娘がそんな目に合わされたのなら決闘だな」
特に怒りを露わにするのは同盟国にケルニア国の王弟殿下。
王の代理として来ていたのだが、ケルニア国は宗教を重んじ、一夫一婦制を貫く珍しい国だった。
勿論奴隷制度もなく、ケルニア国は民を大事にする国としても有名だ。
中でも女性には優しくをモットーとしており、そのような卑劣な行為は許せないのだ。
「最低ですね。そのような行為は」
「まったくだ。我が国は一夫多妻だが、女性を愛でるものだ。傷つけるなど言語道断。目の前にいたら我が剣で切り刻んでやりたいものよ」
(まずい…)
(なんと厄介な!)
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フレスベルグを神とする国でもある為、彼等を怒らせればフレスベルグが襲って来る。
その隣にいる代表はデミタス王国。
炎の国と呼ばれ、守護神は火の鳥で彼等自身も炎の魔力の使い手だ。
怒らせれば燃やされるだけでは済まない。
もし、その本人がここにいると知れば確実に公開処刑なのだ。
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