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第四章
2.小さな王女の反撃
しおりを挟む馬車の中で厳しい視線を向けられる二人は何も言えなかった。
そんな最中、さらに追い打ちをかけるのがアッテリカ王国の代表として招待されていた国王と王女のリデルだった。
「これが、貴方達の考えなのか?」
「リデル王女!」
扇を片手に冷たい視線で射貫きながらゾフィスは冷や汗を流すも、リデルは気にも留めない。
「まぁ、我が国のように小さな国は民を大事にせねばならぬ。民を蔑ろにしても栄光が続くとは大したものだ」
「やめんかリデル」
「ですが父上、妾は王族として民を大切にしている聡明なるマリー・アンジェ王女を尊敬していましたが。勅使が民を蔑ろにしているとなると疑いを持ってしまいます」
「なっ!」
「無礼な…子供の癖に!」
リデルの軽蔑の眼差しと暴言にカッとなり手を上げそうになるロイドだったが。
「お止めなさい見苦しい。更なる狼藉を重ねるとは…今すぐ馬車から突き飛ばされたいのかしら」
「無礼な。姫君に手を上げるとは」
リデルが手を上げられることはなかった。
傍に付き添っていたローカスがロイドの手を掴み捻り上げていたのだ。
「ぐぁぁぁ!」
「リデル姫の言う通りです。誠に恥ずかしい限りですわ。返す言葉もございません。ロイド、この場で謝罪なさい」
「しかし…」
「聞こえなかったのですか?国に泥を塗り、他国に恥を晒して謝罪もせぬとは…皆様、申し訳ございません。このような」
謝らないロイドに代わり謝罪をするアンジェに周りは慌てる。
「何を…」
「どうか頭をお上げください」
「アンジェ王女が謝罪する理由はございましょうか?貴女様は民を大切になさる方と聞いております」
ゾフィスとロイドの失言を詫びるアンジェを責める者はいなかった。
むしろ好感度はあったが、失言をした二人には悪い印象が強くなり睨まれてしまった。
「王女殿下に頭を下げさせるとは…」
「侯爵家と聞くが、何時から王族よりも偉くなったのだ」
「国の代表として来ているのに、自覚が無いのか」
「聞けば皇后陛下の元婚約者だったらしいが…それにしても礼儀が無さすぎるし、物を知らなさすぎではないか?」
既に味方はいなかった。
国の代表として招待を受けながらもこのような振る舞いをすれば非難されるのは明白だった。
既に馬車の中では重苦しい空気が流れる中、美しい花の道を進む宮廷の中に入って行ったのだった。
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