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第四章
1.他国の貴賓
しおりを挟む式典当日を迎え、同盟国と友好国を出迎え。
客人を持て成すべく、多くの馬車が宮廷に到着した。
竜族の国を始めて訪れる貴賓は幻想的な光景に驚いていた。
虹の橋を渡り、その先には美しい二つの大樹が輝きを放ち、竜馬が飛び回る光景はおとぎ話ののようだった。
そして、しばらく馬車が進んだ先には大きな門が開き、東洋式のお城には言葉も出なかった。
「これは天空の城…なんて豪華なの」
「煌びやかだけではないな。なんと品の良いのだ」
「周りには美しい白百合が」
国の貴賓達は見た事もない作りの城に美し過ぎる庭園に目を奪われていた。
案内役であるフリーダは誇らしげに説明する。
「こちらの庭園は竜帝陛下が皇后陛下の為に我が帝国一番の庭師に作らせました。宮廷内には多くの花に果実もあります。すべて最上の物でございます」
「皇后陛下は大変な美食家だと聞いています」
「ええ、我が国もクリステリア帝国の名物は大変な人気で、貴族の間でも限られた者しか口にできぬと」
現在他国でもリリアーナが開発したクリステリア帝国の名物は人気だった。
特に果物を使ったスイーツは見た目も華やかで美しく味も素晴らしいもので特に女性に人気だった。
「我が帝国の宮廷菓子職人が皇后陛下の為に竜帝陛下が厳選して選びました」
「竜帝陛下自ら!」
「はい、中には平民の者もおりますが。厳しい訓練を受けさせ試験をクリアした者のみ。我が帝国では身分よりも人柄、才能、腕を重視しております」
他国でも下級貴族が料理人になることはあるが、皇族専属の料理人が平民であるのは稀だった。
にも拘らず、クリステリア帝国では身分問わずと言い切るのに驚いた。
「しかし、皇后陛下の口に入る料理を平民に任せるのはどうなのか…」
「同感です。皇帝の正妃がそのような」
ここで非難を告げたのは、ウィンドル王国の代表として招かれたロイドとゾフィスだった。
ここぞとばかりに馬鹿にしている二人だったが――。
「ではお聞きしますが、ウィンドル王国の料理の全ては何方がお作りに?野菜は?麦は?貴族が作って居るのですか?」
「えっ…」
「皇后陛下は贅沢な料理よりも、その土地でできた郷土料理こそ最上の料理だとおおせでした。どのような豪華な料理も、質素な食卓からヒントを得て生まれるのだと我らの皇帝が申しておりました」
「そんな世迷言を…」
ロイドは更に罵倒を浴びせようとするが他の貴賓達は同意した。
「誠にそうですわね」
「我が国の伝統料理も同じですわ。改良を重ねて新しい料理となる」
「うむ、音楽と同じだな」
フリーダの言葉に賛同する彼等はうんうんと頷く。
「第一、平民だからと明らかな差別をする等いかがなのかね?」
「例え身分低くとも、厳しい試験を受けたのだから評価されるべきだろうに?」
平民だからまともな料理など作れない。
そんな料理を有難がるなんておかしいという発言をするロイドは既に彼等を敵に回していた。
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