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第三章

25.王女の本性

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それぞれの思惑が絡み合う中、愚かな目論みを企てる者を盗み見する人物がいた。


そしてその影は――。



「以上が報告となります」

「ご苦労様。フフッ…随分と舐め腐った真似をしてくださること。本当にクソったれだわ」

グシャ!


報告書を握りしめるのはアンジェだった。
怒りでどうにかなりそうな彼女をルーカスが必死に宥めていたので大事に至らなかったが、怒りで魔力が暴走すれば王宮等吹き飛んでしまう。

それ程のアンジェの魔力は強力だった。


「動くと思ってましてよ?あの屑達なら自分の保身の為にどんなことでもしそうですし」

「ここまで図太いとはな…そのタフさを別の事に使って欲しいな」

怒りさえ湧き起らなかったルーカスは呆れていた。
通常ならば怒るべきなのだろうが、既に二人の向かう先は地獄しかないので、怒る気も失せていた。


「本当に私の神経を逆なでするのがお上手です事。既に彼等の悪事はしっかりと私の耳に入っているのにも気づいてな無いようですわね?」

「黒幕があの男と気づいているのは少人数ですよ。まぁちらほら証拠は出て来てますが」

神殿側を調べるのは手続きに、許可をとならなくてはならない。
家宅捜査のような真似を神殿側は侮辱だと言って認めないだろうし、正当な理由をつければ教皇は許可してくれるかもしれないが、他の者は納得しないだろう。


捜査をする前に証拠を消されるので影を忍ばせ、黒幕の目星をつけておいた。
だが、今のままでは捕らえることはできない。

証拠としても甘い。

「サンドラは聖女だったが、心が病んで魔女となってしまった…そういえば彼等に責任はないとされる。でも、最初から聖女ではないのに、偽った証拠を公の場で宣言させる必要があるわ」

「自白をさせるのは至難の業ですが、人間追い込まれれば冷静さを失いますからね」

「ええ、既に崖っぷちな状況のゾフィスに、ロイド。あの二人を効率よく始末する為には過去の罪状ともう一つ罪を追加しなくては」


美しい笑顔の中に腹黒さを見せるアンジェはある意味、父親よりも王らしさを持っている。


「他人を踏みつけ甘い汁だけ吸おうなんて許さないわよ…絶対に追い込んでやるわクソ野郎」

「王女殿下、公でそのような言葉をお使いにならないでくださいね」

「わかっているわ…そこまでヘマをしないわ」


親しい者以外は知る事さえなかった。

他国では美しく聡明で淑女の鑑とまで言われるアンジェがぶっ飛んだ姫であることを。

そして彼女はかなりの腹黒であることを。

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