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第三章
24.もう一人の王
しおりを挟む大掛かりな式典の準備がされる中、イサラは協力者を呼んで会議を行っていた。
リリアーナが立后して始めての大事な行事なのでリリアーナも準備で大忙しだった。
「重い…頭が」
「陛下、我慢ですわ。此度の式典は同盟国に他国の勅使もいらっしゃるのです。ここで威厳を見せなくては」
「威厳って言ってもね」
普段リリアーナが行っている公務は政治とは言い難いものだった。
辺境地の視察に向かい、各地の領民の暮らしをぶりを自分の目で見て、病や震災の影響で来栖三者はいないか。
また、各地に薬草農園を増やしたり他国の食文化を学んだりしている。
最近では異国の宗教の勉強も活発に行っているのだが、政治に直接関係しない物ばかりだ。
なのに何故威厳を示すのかと思った。
「よろしいですか、我が帝国の切り札は竜后陛下なのです。今でこそ、その伝統は薄くなっておりますが、初代竜后陛下が威厳を示し、他国と対等に渡り歩いたと言われております」
「そちらに関してはこのフリーダがご説明したしますわ」
女官三人組の中でも一番博識なフリーダが分厚い本を取り出す。
「どの国も万物共通なのは国を納める君主はお一人。しかし竜の国は異なります。王の配偶者。つまり妃も同列に扱われるのです」
「現在クリステリア帝国の唯一の妃はリリアーナ様です」
「はい」
ロッテンマリアが確認し、フリーダは説明を続ける。
「竜帝陛下の第一妃は皇妃となります。しかし、イサラ陛下は妃はお一人だけなのです。帝国では女王とされます」
「えーっと…」
「陛下は妃には持ちえない特権をお与えになられたのです。言わば陛下の代行という立場を」
「いや、無理でしょ!私まだ成人してない子供なのに!」
未だに社交デビューも果たせない年齢で、クリステリア帝国でも十四歳で成人とみなされるのだ。
「あくまで通常の場合です」
「そうですわ、リリアーナ様はこれまで常識をぶち壊して来たではありませんか」
「メイリン、褒めているの?貶しているの?どっち!」
普通の妃ではまずありえない行動を起こし、一年足らずで敵対関係にある竜の長を味方につけてしまったリリアーナをただの妃に例えるのは無理があった。
「後見人に海竜の長と、地竜の長を味方につけ…現在は妖精族と精霊族からも一目置かれています」
「いや、精霊さん達はついでのような」
妖精に愛されるリデルをなんの見返り無く救い、あまつさえリデルの国を守るべく同盟を結んだ見返りがゴールデンシロップだけだったのを知った水の精霊は涙を流した。
いかに価値が高くとも、見返りとしては少なすぎると思ったが。
実際、そのシロップを薄めて作ったお酒や、甘味料は帝国を潤してくれた。
リリアーナからすれば十分だったが、その噂を聞きつけ他の精霊達も欲が無さすぎると涙しリリアーナを指示した。
誤解が誤解を生み、リリアーナは精霊にもい愛される竜后だと評判になってしまったのだ。
「勘違いって怖い…」
「いいえ、すべてリリアーナ様の功績です。その為式典で、威厳を見せて他国に我が帝国の女王様がどれだけ素晴らしいが見せつけるのです。女性が行きやすい国を作る為にもリリアーナ様の振る舞いにすべてかかっております」
「はは…」
ものすごくプレッシャーだった。
下手な行動をすればどうなるのかなんて想像したくなかった。
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