竜皇帝陛下の寵愛～役立たずの治癒師は暗黒竜に今日も餌付けされ中！

第三章

20.イサラの警戒

災いを呼ぶ手紙が届いてから一か月後、他国も招き式典が行われる。
正式に竜帝陛下となり、初めての式典に各国の代表は参加する手はずとなっている。

勿論、自称リリアーナの義父を名乗るポセイドンも参加する事になっている。
他にも新しく同盟を結んだアッテリカ王国や、レンの祖国スラリンカ王国に懇意にしている葦原中国あしはらはかつくにと呼ばれる東洋の国も参加する。

式典が終われば同盟国を招き、食事会を行う事になっている。
ウィンドル王国も参加することになっているが、ロイドも参加する手はずだろう。


しかし、国の代表であろうとも招待客の優劣は存在する。
王族の親族や勅使ならば、竜帝とテーブルを囲む事もできるが、それ以下は離れた席を用意させるのだ。


ロイドは侯爵家の子息であっても、同じテーブルに座ることは不可能だ。



「僕の白百合の傍に絶対近づけるな…いいな」

「はい、かしこまりました」

「万一近づこうものなら、僕の可愛いペットの餌にしてやる」

「陛下、お言葉ですが」

咳ばらいをしながら、ディーンは何か言いたげだった。
普段は温厚であるイサラの目が血の色に染まっているので侍従は止めてくれるのだろうと思ったのだが。


「竜馬にそんな下衆な生き物を食べさせるおつもりですか？食中毒になります」

「ㇺッ！」

「どうせなら裸で逆さで引きずり、クロコダイルの群れにちらつかせてはいかがでしょう？人身御供にもならない汚らわしい生き物ですし」


（（酷い！））


イサラよりもずっと酷いと思った侍従はこれ以上口を挟む事はなかった。


「私も、皇后陛下にあんな下衆な男を近づけさせたくはありませんが…帝都には皇后陛下を慕う者がおりましょう？宮廷内にも給仕として勤める者達は、皇后陛下に恩を感じる者ばかりです」


先日の事件で、暴動を起こした女性軍団は隠れてリリアーナの親衛隊を結成していた。
宮廷内は勿論、城下町でもリリアーナに危害を加える男には容赦なく彼女達が団結して常にリリアーナを守っていたのだ。


なので、警備はばっちりだった。


「下町で皇后陛下を悪く言えば袋田叩きですし、宮廷内にも親衛隊が多くおります。宮女以外も給仕係もおります故に…」

「だが、用心しておくべきだ。もしかしたら我が帝国のスキャンダルを起こそうとしているのかもしれない。万一の事があれば叩かれるのは白百合だ。それだけは絶対に許されない」


「はい、心得ました」


クリステリア帝国は新体制になったばかりなので敵は多い。
ロイドを使って混乱を招く輩も多いだろと思ったので、イサラは警戒を怠らなかった。