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第三章
19.理解不可能
しおりを挟む終始恐ろしい笑みを浮かべていたイサラにリリアーナはどうしたものかと思った。
暴れることはないし、普段通りにしているが。
内心ではかなりご立腹であることは解っているのだ。
「普段温厚な陛下があそこまでお怒りになるとは…」
「大人しい方程、一度ブチ切れると手に負えませんからね。竜の怒りでも起こせば地上なんて崩壊しますでしょう?特に正式な竜帝としての継承をされているのですから」
「ああ!」
ロッテンマリアは頭を抱えて涙を流す。
次から次へと難題が続き身が持てないのだから他の側近や女官達は同情の視線を送る。
「ロッテンマリアさん、どうぞ」
「ありがとうございます。あら美味しい」
「新作です」
給仕の服装をしながらさりげなくストレスを緩和するお茶を用意するレンは日に日に侍女としての仕事が上達し、現在はお茶師としての才能を発揮していた。
「レン様、貴方様は竜王よりも竜帝の傍仕えの才能の方がありますね」
「そうですか!照れますね」
(レン…褒められてないよ)
嬉しそうにするレンを見ながらリリアーナは憐れみの視線を送った。
既にメイリンはレンを侍従としていて欲しいと思っているのだが、最終目的は立派な竜王になる事なのだ。
しかし本人は傍仕えの仕事をとても気に入ってしまっているので困った物だが、今は優先すべきはロイドの行動だった。
「何で今さらこんな真似を…聖女様と婚約してるんじゃないの?何が目的かしら」
「大方、ご自分が見下した女性が女王として他国から慕われ評価されるので惜しくなったのでは?自ら宝を束成して置いて今さらですわね」
「酷いです。そんなの…」
レンは涙を浮かべながらロイドに対して嫌悪感を抱く。
「僕は人間の国の掟には詳しくないけど、浮気をして、リリアーナを捨てて、売り飛ばしたのに…酷すぎる」
純情可憐である意味一途過ぎるレンは、婚約者をまるで自分の消耗品のように使う行為が理解できなかった。
「僕には婚約者はいないけど…でも、そんな誠意のない事をするのは男じゃないってお父さんが言ってたよ」
地上を統べる赤竜は気性が激しいとも言われながらも不義を許さない性格だった。
そもそも竜族は高貴さを持ち、かなり一途な性格だったので、女性を食い物にする考えはなかった。
「まぁ、貴族の結婚は利益重視だから」
ロイドのやり方はあまりにも非常識だが、利益がなければ情などない。
特に高位貴族は自分の私欲の為に平気で婚約者を捨てる男が無きにしも非ずだったが、問題は何故このタイミングで手紙を送って来たか。
どうして送れたのかだ。
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