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第三章
18.元婚約者からの手紙
しおりを挟むクリステリア帝国に新しい風を吹かせ続けた頃。
騒々しい日々を過ごしながらも、平和な日々を過ごしていた頃に嵐の前触れは訪れた。
「失礼します」
「はい?」
公務の最中に、入って来たのは宮女の一人だった。
「皇后陛下にお手紙が届いております」
「手紙?」
正式に結婚式を挙げたが、未だに祖国に一度も帰っていないし、里帰り前に手紙が来るのは妙だと思った。
「誰から?」
「はい、メイデン侯爵家からでございます」
「は?」
普段から些細な事では動じないリリアーナも驚きを隠せないでいた。
「ロイド・メイデンって、リリアーナを捨てた婚約者?」
「正確には元だし、私はあの男に…」
レンの言葉を訂正するべく言葉を放つも、傍にいるイサラの中から負のオーラ―が流れる。
「ほぉ?正式な許しもなく、僕のお嫁さんに恋文でも出して来たか?」
「へっ…陛下?」
普段のイサラらしくない態度に冷や汗を流す。
本能的にまずいと察しながらも急いで手紙の中を開けるも――。
(臭い…香水だ!)
手紙からはキツイ花の香りがする。
手紙は恋人に送るような便善で造花の花が一輪添えられていた。
「僕のお嫁さんに随分な手紙だね?花を添えるなんて…」
「陛下、落ち着いてくださいませ」
ロッテンマリアが抑え込むも、イサラの怒りは収まらない。
(何が書いているのか…)
イサラを刺激しないで欲しいと思いながらも手紙を読もうとした…
拝啓愛しのリリアーナへ。
君と泣く泣く別れることになり僕の心は傷ついたままだ。
君を失った心は君無しでは癒されない。
失って初めて気づいたよ。
どれだけ君を愛しているか。
君が僕をどれだけ愛していてくれたか。
「――君を迎えに行く。愛しい君の夫ロイドより」
リリアーナに代わり読み上げるレンは真っ青になる。
「何ですの、この気色悪い手紙は…ありえませんわ」
「ああ、ないな」
最初こそは手紙を読もうとしたが最初の文章で読むのを拒んだのでレンが読むもレンも気持ち悪いと震えていた。
「僕のお嫁さんを何処まで侮辱すれば気が済むんだ?誰が誰の妻だ…そんなに死にたいのか?ならば招待してやろうじゃないか。最高のもてなしをしてやろう」
「陛下…」
「竜族は一途なんだよ。例外はあれど、純潔の竜は伴侶は一人しか持たないからね?だから番を奪うなんてことは重罪に値する」
「はっ…はい」
「しかも竜帝の唯一の妃に手を出せばどうなるか教えてやろう」
既に怒りは最高潮にまで高まっていたイサラはロイドを地獄に落としてやろうと思っていたのだった。
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