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第三章

13.秘伝の蜜

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諸国であるがアッテリカ王国は歴史が長い。
特に精霊の加護を得ている国でもあるので、その国の王女であるリデルは地の精霊と森の精霊の恩恵を受けているがゆえにリデルの完全復活は国に大きな影響を与えた。


アッテリカ王国はお菓子の国とも呼ばれており、蜂蜜が盛んだった。


「すごい、なんて綺麗な色なの!」

「フッ、我が国の最高級のゴールデンシロップじゃ。その辺の紛い物のシロップとは違うぞ」

古い亀壺に入ったシロップを差し出される。


「これはささやかながら礼じゃ。そなたは命の恩人じゃ。我が国は大国ではないが、この蜂蜜は森の妖精が運んでくれた最高級じゃ…」

リデルはこれでは足りないと思っていたが、これ以上の物を差し出せるものはなかった。
アッテリカ王国は決して豊かではなく、他国よりも優れているのは果物が豊作なのと、蜂蜜が沢山採れる事だ。

これだけでは外交は出来ない。
他国からは同盟を結んで欲しくば、妖精や精霊との渡りを作れと脅されていたのだ。

だが、国王もリデルも、欲深い人間が考えている事が透けて見えていた。
同盟を組むと言いながら従国にして、妖精狩りをするのが本当の企みだった。

妖精狩り。
その名の通り、妖精を捕らえ、精霊をおびき出そうとする者がいる。
裏冒険ギルドが中心だが、精霊は警戒心が強く、よほどのことがない限り人前に出てくることはない。


ただし、妖精は別だった。
精霊ほどの力を持っていないので、人間とは距離感が近い。
特に妖精が加護を与える人間の元には頻繁に顔を出すので、裏冒険ギルドは妖精に好かれる子供を攫う事も少なくなかったのだ。


そして、森の妖精が生息するアッテリカ王国も他国から、支援してやるから妖精を差し出せと言われているのだが、国王は首を縦に振ることはなく、生まれた時から見守ってくれた妖精をうる行為をリデルも嫌がったのだ。


(妾は何も返せるものがない…)


リデルの呪いを解く為に腕の良い治癒師を派遣する代わりに無理な同盟を結ばざる得ない状況になっていた父が苦しんでいるのは知っていた。


そんなタイミングにリリアーナは現れ、リデルを救い、国の象徴たる大樹と聖花を息吹かせてくれたのだ。

対価として少なすぎるし、他国なら侮辱だと言われるのだが…


「なんて甘くて素敵な香りなの!」

「うんうん、すごく素敵な香りがするよ。このシロップがあれば素晴らしいスイーツが作れるよ。君の大好物のケーキだって、パイだって」

「想像しただけで心が躍ります」


本人はこれ以上無い程喜んでいた。


(女王がこんなので良いのか…)


安堵するも、少しばかりリリアーナを心配する幼き王女だった。


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