竜皇帝陛下の寵愛～役立たずの治癒師は暗黒竜に今日も餌付けされ中！

第三章

8.呪い

リデルの表情は怒りを表していた。


「どうしたのリル」

「そなたも妾を謀る気じゃな。もう沢山じゃ！」

「え？」


怒りと同時に垣間見えたの悲しみと絶望だった。

「どうせ気休めじゃ。妾は嘘をつく奴は嫌いじゃ。妾はどうせ助からぬ…呪いで死ぬのじゃ！」

「死ぬ？何を…」

「これまで何人の医師が、治癒師が妾を治そうとしたか。それでも無理だった…理由は簡単じゃ。あの女が妾に呪いを植え付けたのじゃ…妾があの女の取り巻きにならないと言った故にな！」

「あの女？」


リリアーナは嫌な予感がした。
リデルが胸元を捲り見せたのは心臓の部分を覆いつくしている入れ墨だった。


「これは蛇吸殺…なんて事を」

「白百合、どういう呪いなの？」

竜の一族は強い生命力がある為呪いでは簡単に死ぬ事はない。
術者も負担がかかるからだ。

しかし人間は異なる。
生贄を用意すれば子供ぐらいなら簡単に呪う事は可能なのだが、この呪いは通常よりも悪質だった。


「黒い蛇に血を吸わせジワジワ殺す、恐ろしい呪いです。しかしこのような呪いは贄が必要ですし、強い魔力が…」

「あの似非聖女じゃ…妾に呪詛を仕掛けたのは」

「なっ…サンドラ様が！」


ありえないとも思ったが、彼女ほどの魔力の元主ならば可能だった。


「あの女は聖女の力を失いかけてる故に妾に協力しろと申して来た…しかし、妾は以前から怪しいと思っていた。あの女は恐ろしいと…何より好かぬ。じゃからお前のような恐ろしい女の手下になる気はないと申したのじゃ」

「リル、せめて言い方が」

「何故じゃ、あの女は我が国を、父上を侮辱したのじゃぞ？何様じゃ！」


かなり威勢のいい姫君だと誰もが思った。
幼いが中々勇気があり聡明でだとも思ったのだ。

「白百合、この子を助けてあげられないかな？可哀想だよ…」

「呪いを解くには術者に呪いを解かせるか、浄化するしかないのです。ですが浄化できる程の能力は私には」

せめて呪いの進行を止めるぐらいならばできるが、完全に呪いを解くことは難しいと思った矢先。


リリアーナが呪いに降れた瞬間、光が灯る。


同時に三種の神器が強い光を放ち何かが割れる音が響いた。


「何じゃ！」

「リル！」


リデルの胸の呪印が光に包まれ、呪いの呪印が消滅したのだった。



「嘘…」

「呪いが消えた」

「またですか」

「まただな」


メイリンと竜騎士一同はまたしてもリリアーナがやらかしたのに理解する。

そしてその呪いを解いてしまえばとんでもない事になるだろうと予測した。