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第三章
4.元婚約者の現状①
しおりを挟むその頃、聖女の権威を失い。
自称聖女の騎士を豪語したロイド・メイデンは社交界の噂の的だった。
噂と言ってもいい噂ではない。
勿論悪い噂により爪はじきに合っていた。
「聞きまして、リリアーナ様の吉報!」
「聞きましたとも、新聞でも取り上げられてますわ。何でも長らく停戦状態の天界と海界の同盟を結び、前妃で、国を混乱に導いていた悪女に、恐怖政治を目論む元大公から帝国を守られたとか」
「ええ、本当に素晴らしいですわ。流石は癒しの姫君と呼ばれる方ですわ」
誰もがリリアーナの功績を褒めちぎっていた。
海界と天空の懸け橋になるという偉業を成した功績は、現在国王の耳にも入り絶賛していた。
「聖女様の身代わりになりながらもしっかりお役目をこなされて、聞けばリリアーナ様は皇后に立后されたとか」
「まぁ!流石ですわ。やはり器のある方は違いますのね?竜族は気性が荒く気位が高いと聞きますが、その竜族に認められるなんて」
「やはり長い歴史と伝統を持つ家柄は違いますわね…それに比べて」
「ええ、節度もない元婚約者は…」
ちらりと遠巻きに令嬢達はロイドを見た。
現在サンドラは聖女としての振る舞いを疑われ、巫女に暴力を振るっている噂も広まり。
巫女の役目も全うできないと非難を浴びている。
同時にその婚約者を豪語するロイドも社交界で度重なる失態を重ね王族から信頼を失っている。
「ご自分の婚約者を売った挙句、すぐにサンドラ様と婚約したなんて節操がありませんわね」
「元からメイデン家はアンシー家の後ろ盾が欲しかっただけですし。ロイド様は騎士としての才は一切ありませんわ」
「ええ、御自分よりも幼い婚約者を竜族に売るなんて…普通は出来ませんわね。よっぽど劣等感を抱いていたのでしょうね」
好き放題言う令嬢や夫人達だが、実際ロイドは優秀ではなかった。
全てに秀でている必要はないが、あまりにも欠けている物が多く、公の場で婚約破棄をして幼い婚約者を売り飛ばして、自分は泣く泣く婚約者を手放し聖女を守った英雄にでもなった気でいたが、むしろ逆だった。
平気でまだ幼さが残る婚約者を単身で竜の国に送り込み、引き渡しの儀にも参加しない薄情な男であることは露見しているのだ。
第一王子と王女は危険を承知で引き渡しの儀の近くまで馬を走らせたというのに、なんという薄情な男かとも言われていた。
そうでなくとも社交界で、サンドラと共にマナー違反を続け。
これ見よがしに自分は素晴らしい事をしたと豪語するも、同盟国が参加するパーティーでは宗教を重んじる国がある。
その国の中では妻を大事にすることこそ良き夫だと言われているのだ。
それを幼い婚約者を平気で売り、得意げにするロイドに良い感情を持つはずがない。
メイデン伯爵家自身も社交界から爪はじき状態だったのだ。
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