79 / 128
第二章
43.勘違いの末
しおりを挟むかくして、クリステリア帝国を混乱に招き、民を虐げた悪の大公は消えた。
そして彼に協力した反乱軍は後に、若き竜帝を亡き者にしただけでなく、民の為に心を尽くした聡明かつ美しい若き妃を罪人として始末しようとした事により、重罪人として捕縛されることになるも。
死刑になることはなかった。
生きて一生罪を償わせたいという、竜妃の慈悲によるものだった。
自分を罠に嵌めた罪人に情けをかける懐の深さに多くの者は感銘を受けた。
初代竜后も聡明でありながらも、慈愛に満ちた女性であったことから若き竜妃は初代竜后に通じる者があるとも言われるようになった。
二人は帝国の希望だと、多くの者から愛され、正式に戴冠式を終えた後に新たな竜帝が誕生した。
その場には、海皇帝陛下と深海の女神も同席し、彼等の未来はとても明るいと誰もが思った。
…はずだったが。
「ねぇ、何でこんなに着飾られるの?」
「竜妃殿下から、竜后陛下となり遊ばされましたので。当然かと」
「私、結局食べらないの?」
「いいえ、食べられます。別の意味でですが…」
クールにさらりと言い放つメイリンだったが、傍に控えている竜騎士は何とも言えない気分になった。
「女官殿、少しはオブラートに!」
「そうですよ!」
「では?成人の後に寝所で食べられると申したらよろしいでしょうか?食べられるのは変わりありませんが」
「侍女殿ぉぉぉ!」
明け透けな物言いのメイリンに彼等は真っ赤にしながら突っ込む。
「もっと早い段階で誤解を解くべきでしたわ。よく考えれば幼い姫様が陛下に食べられる意味を間違えていたんなんて」
「贄の意味をはき違えておられたとは…」
メイリンだけでなく彼等も頭が痛かった。
最後は夫の血肉になると解りながらもあそこまで明るく振舞っていたのを思うと哀れでならない。
同時にリリアーナを生贄として送り込んだ人間達に殺意が芽生えた。
肝心のイサラはというと。
「聞いていない…贄の意味がそんなんだったなんて!」
「いい加減にしてください陛下」
「だって、僕はそんな男だと思われていたの?いつか食べる為に白百合にあんなことをしたと…悲しいよ」
ガイアンが拘束された後、急いで戴冠式の準備を進めらた。
二人は真面な会話もないまま進められるも、ようやく戴冠式が終わった後にイサラは部屋に引きこもり落ち込むことができた。
ガイアンを捕縛した後に聞かされた贄の一件は、傍仕えの者にも混乱を招いたのだが、よく考えれば人間側と竜族側の解釈の違いによるものだったのだが、普通は気づくだろうと内心で突っ込んだ。
何処の世界に生贄として食べる獲物を妃に迎えるのか。
しかし、リリアーナは人間でまだ子供だ。
多少、思い込みが強くなっても致し方ないのだが…。
「僕、リリアーナを食べたくないよ。僕のお嫁さんになって欲しいのに」
「既に戴冠式も終わっているのです。今さらですね」
「ロッテンマリアは酷いよ。僕がどれだけ白百合を愛しているか…行く行くは彼女と平凡で温かい家庭を作ろうと思ってたんだよ」
(すでに平凡は無理です)
今さら何を言うのか。
既に平凡とは程遠い二人が普通の家庭を築くのは不可能だと思いながら、この頓珍漢竜帝をどうするか頭を抱えるロッテンマリアだった。
51
お気に入りに追加
5,999
あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。
美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。
そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。
それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった!
更に相手は超大物!
この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。
しかし……
「……君は誰だ?」
嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。
旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、
実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです
珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。
その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。
そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。
その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。
そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる