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第二章
43.勘違いの末
しおりを挟むかくして、クリステリア帝国を混乱に招き、民を虐げた悪の大公は消えた。
そして彼に協力した反乱軍は後に、若き竜帝を亡き者にしただけでなく、民の為に心を尽くした聡明かつ美しい若き妃を罪人として始末しようとした事により、重罪人として捕縛されることになるも。
死刑になることはなかった。
生きて一生罪を償わせたいという、竜妃の慈悲によるものだった。
自分を罠に嵌めた罪人に情けをかける懐の深さに多くの者は感銘を受けた。
初代竜后も聡明でありながらも、慈愛に満ちた女性であったことから若き竜妃は初代竜后に通じる者があるとも言われるようになった。
二人は帝国の希望だと、多くの者から愛され、正式に戴冠式を終えた後に新たな竜帝が誕生した。
その場には、海皇帝陛下と深海の女神も同席し、彼等の未来はとても明るいと誰もが思った。
…はずだったが。
「ねぇ、何でこんなに着飾られるの?」
「竜妃殿下から、竜后陛下となり遊ばされましたので。当然かと」
「私、結局食べらないの?」
「いいえ、食べられます。別の意味でですが…」
クールにさらりと言い放つメイリンだったが、傍に控えている竜騎士は何とも言えない気分になった。
「女官殿、少しはオブラートに!」
「そうですよ!」
「では?成人の後に寝所で食べられると申したらよろしいでしょうか?食べられるのは変わりありませんが」
「侍女殿ぉぉぉ!」
明け透けな物言いのメイリンに彼等は真っ赤にしながら突っ込む。
「もっと早い段階で誤解を解くべきでしたわ。よく考えれば幼い姫様が陛下に食べられる意味を間違えていたんなんて」
「贄の意味をはき違えておられたとは…」
メイリンだけでなく彼等も頭が痛かった。
最後は夫の血肉になると解りながらもあそこまで明るく振舞っていたのを思うと哀れでならない。
同時にリリアーナを生贄として送り込んだ人間達に殺意が芽生えた。
肝心のイサラはというと。
「聞いていない…贄の意味がそんなんだったなんて!」
「いい加減にしてください陛下」
「だって、僕はそんな男だと思われていたの?いつか食べる為に白百合にあんなことをしたと…悲しいよ」
ガイアンが拘束された後、急いで戴冠式の準備を進めらた。
二人は真面な会話もないまま進められるも、ようやく戴冠式が終わった後にイサラは部屋に引きこもり落ち込むことができた。
ガイアンを捕縛した後に聞かされた贄の一件は、傍仕えの者にも混乱を招いたのだが、よく考えれば人間側と竜族側の解釈の違いによるものだったのだが、普通は気づくだろうと内心で突っ込んだ。
何処の世界に生贄として食べる獲物を妃に迎えるのか。
しかし、リリアーナは人間でまだ子供だ。
多少、思い込みが強くなっても致し方ないのだが…。
「僕、リリアーナを食べたくないよ。僕のお嫁さんになって欲しいのに」
「既に戴冠式も終わっているのです。今さらですね」
「ロッテンマリアは酷いよ。僕がどれだけ白百合を愛しているか…行く行くは彼女と平凡で温かい家庭を作ろうと思ってたんだよ」
(すでに平凡は無理です)
今さら何を言うのか。
既に平凡とは程遠い二人が普通の家庭を築くのは不可能だと思いながら、この頓珍漢竜帝をどうするか頭を抱えるロッテンマリアだった。
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