上 下
68 / 128
第二章

32.革命前夜

しおりを挟む




イサラまでも幽閉され、神殿にて公開処刑が行われるまで幽閉の身となった。


「僕のお嫁さんはどうしているだろうか…暴力を受けてないといいけど」


幽閉されながらもイサラはリリアーナの安否を心配していた。

「ディーノが守ってくれるだろうけど…あ、食事!」

今になって気づく。
食事は大丈夫だろうかと。


「ああ!牢獄にいる最中はきっと固いパンにスープだけじゃないか!なんてことだ…僕の可愛いお嫁さんが餓死する!」


普段の食欲ぶりなのに足りるわけがない。


「陛下、幽閉中に騒がないでください」

「ロッテンマリア。大変だ…僕の白百合に早く肉を届けてくれ」

「は?」

黒子のような恰好をして隙を見て幽閉されいる部屋に忍び込んだロッテンマリアは耳を疑う。


「僕のお嫁さんが餓死してしまうよ!」

「ご心配ありません。兵糧丸を差し入れしております」

「何だって!あんなマズイ糞のようなものを?ダメだ」

「言葉を改めください!」

「わぁぁぁ!」


防音設備があると言え、外に聞こえるイサラの悲鳴は乱心したと誰もが思った。


そのおかげで、ガイアンの手先の者はすっかり油断しているのだが。


「だって、牢屋に入れられて食事まで貧相なんて」

「囚人として囚われているのですから」

「ううっ…なんて可哀想な僕のお嫁さん。きっと気丈に振舞っているんだろうね…解決したら沢山ごちそうを振舞わないと」


「ええ、ですからしくじらないようにお願いします。もし間違えれば妃殿下は首を切り落とされますので」

「やめてぇぇぇ!」


愛しい妻が首を切り落とされる光景なんて見るに堪えない。


「よろしいですか、妃殿下の覚悟を無駄になさらないでください。今も冷たい牢屋で食事だって貧相で耐えておられます」

「解っている…これまでは身内の情もあったけど」


ガイアンは己の欲望の為に罪を重ね過ぎた。
リリアーナに手を出さなければイサラもここまで強引な事はしなかった。


「僕のお嫁さんに手を出した罪は重いよ」

「ええ、ですが…お二人も馬鹿な事をなさいましたね」

「ん?」

「手紙が来ております」


眉をしかねながら差し出した手紙を見ると。


「これ不味くない?」

「ええ、海皇様はとてもお怒りです。当然ですが」


手紙の内容ような声に出して読む事すら恐ろしい程にガイアンへの怒り書かれている。


「既に呪いの言葉まで書いているんだけど」

「恐らく…」

海皇がリリアーナを溺愛している事など知りもしないので、後が恐ろしかった。


「当日民がどう出るかだ…リリアーナの無実が証明されても、こんな騒ぎを起こしたのが人間の娘を迎えたからなんて言い出す者が出るだろう」

「だとしても、妃殿下には器があります。その器が民の心に届けば巻き返しができます。そして多くの群衆の声はどんな権力者の前でも勝るのです」

一人一人の声は小さくも、大勢ならばその声は武器となる。


すべては民の声にかかっていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す

干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」 応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。 もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。 わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

処理中です...