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第二章
32.革命前夜
しおりを挟むイサラまでも幽閉され、神殿にて公開処刑が行われるまで幽閉の身となった。
「僕のお嫁さんはどうしているだろうか…暴力を受けてないといいけど」
幽閉されながらもイサラはリリアーナの安否を心配していた。
「ディーノが守ってくれるだろうけど…あ、食事!」
今になって気づく。
食事は大丈夫だろうかと。
「ああ!牢獄にいる最中はきっと固いパンにスープだけじゃないか!なんてことだ…僕の可愛いお嫁さんが餓死する!」
普段の食欲ぶりなのに足りるわけがない。
「陛下、幽閉中に騒がないでください」
「ロッテンマリア。大変だ…僕の白百合に早く肉を届けてくれ」
「は?」
黒子のような恰好をして隙を見て幽閉されいる部屋に忍び込んだロッテンマリアは耳を疑う。
「僕のお嫁さんが餓死してしまうよ!」
「ご心配ありません。兵糧丸を差し入れしております」
「何だって!あんなマズイ糞のようなものを?ダメだ」
「言葉を改めください!」
「わぁぁぁ!」
防音設備があると言え、外に聞こえるイサラの悲鳴は乱心したと誰もが思った。
そのおかげで、ガイアンの手先の者はすっかり油断しているのだが。
「だって、牢屋に入れられて食事まで貧相なんて」
「囚人として囚われているのですから」
「ううっ…なんて可哀想な僕のお嫁さん。きっと気丈に振舞っているんだろうね…解決したら沢山ごちそうを振舞わないと」
「ええ、ですからしくじらないようにお願いします。もし間違えれば妃殿下は首を切り落とされますので」
「やめてぇぇぇ!」
愛しい妻が首を切り落とされる光景なんて見るに堪えない。
「よろしいですか、妃殿下の覚悟を無駄になさらないでください。今も冷たい牢屋で食事だって貧相で耐えておられます」
「解っている…これまでは身内の情もあったけど」
ガイアンは己の欲望の為に罪を重ね過ぎた。
リリアーナに手を出さなければイサラもここまで強引な事はしなかった。
「僕のお嫁さんに手を出した罪は重いよ」
「ええ、ですが…お二人も馬鹿な事をなさいましたね」
「ん?」
「手紙が来ております」
眉をしかねながら差し出した手紙を見ると。
「これ不味くない?」
「ええ、海皇様はとてもお怒りです。当然ですが」
手紙の内容ような声に出して読む事すら恐ろしい程にガイアンへの怒り書かれている。
「既に呪いの言葉まで書いているんだけど」
「恐らく…」
海皇がリリアーナを溺愛している事など知りもしないので、後が恐ろしかった。
「当日民がどう出るかだ…リリアーナの無実が証明されても、こんな騒ぎを起こしたのが人間の娘を迎えたからなんて言い出す者が出るだろう」
「だとしても、妃殿下には器があります。その器が民の心に届けば巻き返しができます。そして多くの群衆の声はどんな権力者の前でも勝るのです」
一人一人の声は小さくも、大勢ならばその声は武器となる。
すべては民の声にかかっていた。
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