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第二章

31.包囲網

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一週間の間に、帝都ではリリアーナの悪女説出回り、ついにはイサラの廃位を促す声も出ていた。


「残念ですな陛下、貴方様がそのような愚かな振る舞いをするとは」

「愚か…とな?」


余りにも用意周到に王宮を爆破した次は帝都に震災や魔獣が暴走する事件が続いた。

いくら何で出来過ぎている。
誰かが仕組んだなんて明白であるが、証拠はない。

「民もさぞ落胆しているでしょう。信じていた皇帝が災いを呼ぶ小娘を妃に迎えたばかりに」

「災いと決まったわけではない」

「まだ言いますか」

「決めるのは僕でも貴方でもない。世界樹と民だ。貴方に決める権利はないはずだ」

「この期に及んで馬鹿な事を…民は既に新たな支配者を望んでいる。明後日の断頭台で処刑される小娘を見ても言えましょうか」

「……」

無言になるイサラを見てガイアンは気分が良くなる。
こうなった以上は手出しはできないだろうし、公の場でリリアーナを悪の妃に仕立て上げ、悪の妃を作り出したイサラを連帯責任にすれば英雄として君臨できる。

邪魔な者は全て排除し、何の憂いもなく竜帝になることができる。


(天竜剣が手元にないのが惜しいが…まぁいい)


正式な竜帝に就任する為には天から生まれし竜の剣。

天竜剣が必要になる。

しかしその剣はかつて対となる剣がなければ姿を見せないのだ。

(聖剣の居場所が解ればすぐに手に入れられるだろう)


対となる聖剣が導くと言われているのだ。

そして真の竜帝の配偶者となる竜妃が世界樹に認められた証として黄金の杖が与えられるのだ。

黄金の杖は皇妃としての称号でもあり、天空の竜族の中、最も地位のある女性を意味していた。


優れた竜帝と隣に並び立つに相応しい女性としての照明であり、三界の御意見番としての地位も約束されていた。


(あの女には竜妃程度の器しかない。用が済めば始末すればいい)


伝説の竜后等所詮は言い伝えに過ぎないと思い、パイドラはリリアーナを排除する為の道具にしか過ぎなかった。


「いいでしょう、では民の声を聞きましょう。私も皇族の者として真摯に向き合います。例の神殿で判決が下されるでしょう」


例の神殿とは、白竜の魂が眠っているとも言われる神殿であり、世界樹の声が聞こえると言い伝えられ礼るのだ。


(当日雷を落としてくれる…その後竜に襲わせればいいのだ)


多くの人の心を傷つけ侮辱しようともガイアンにとってどうでも良かった。
例え帝国の守護神を侮辱する行為でもどうでも良かった。

自分が世界を手に入れさえすれば、民の命も、貴族も竜騎士達もゴミ屑程度にしか思っていないのだから。


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