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第二章

27.キレる妃殿下

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時をさかのぼる事数時間前。

竜妃宮にて、信頼出る者だけを集めてリリアーナはある計画を考えた。

「今から私は牢屋に入るわ」

「「「は?」」」


いきなりこれだったので、誰もが素っ頓狂な声を上げた。


「まずは手始めに、私が謀反人になるように仕組むわ」

「妃殿下、何を」

「そろそろ、私も切れそうなの…私、権力を持つだけで何もしない屑野郎に自分の手は汚さず高みの見物をしているだけの輩って、反吐が出る程嫌いなの」

「へ?」

バキバキ!!


片手で扇を握り、粉々にするリリアーナにフリーダが冷や汗を流す。


「姫様…」

「しかも、常日頃から良き竜帝であろうと必死に頑張っているい陛下を失脚?ふざけるんじゃないわよ。あのクソ妃も不愉快だけど…もっとムカつくのはあのクソ大公だわ」


パイドラの嫌がらせを回避する中、イサラの幼少期を聞かされリリアーナはブチ切れそうになったが、過去の事だし、他所の皇族の話なので、蒸し返すべきではないと我慢はした。


我慢の末に暴れたのだが。


しかし今になって竜帝の座を欲し、しかも帝国が落ち着きだしたのを狙って帝位を奪おうと言う魂胆が許せなかった。


挙句の果て、帝都が落ち着きを取り戻したのはガイアンのおかげだと言う噂を流している者までいるではないか。

正直今すぐぶん殴ってやりたかった。

枯れてしまった二つに大樹がようやく息を吹き返し、廃れた地方を救うべくイサラがどれだけ努力したか。


「私、人の手柄を横から奪う男は大嫌いなんです。自分はなんの努力もしないでいる癖に」

「はっ…はぁ」

「ついでいうと、男の癖に指輪や装飾品をジャラジャラ着飾り、香水臭いのも大嫌いなんですよ」


ガイアンの装いはどこぞの成り上がりの成金のような装いでもあり、根っからの戦闘民族の末裔として育ち、貴族の境地を守るべく育ったリリアーナからすれば許せない装いだった。


「あんな男が竜の国を納めたら、竜の国だけでなく、地上も沈みます。ええ、絶対に」

「はい…」

「ですので、早々に隠居いただこうかと」

「隠居?」

「ええ、老害には国を納める能力はないでしょうしね?」


普段のリリアーナでは想像できない程の恐ろしい表情だった。


(姫様のお顔が…)

(鬼…いや鬼神のように歪んでいる!)

(あのお優しい姫様が!)


女官三人組は普段からリリアーナん傍でお世話をしていた故に、この変わりようについていけなかったのだが、竜騎士達は反対の反応を見せていた。


「素晴らしいです妃殿下!時には恩自ら前に立つとは」

「そこまで陛下の事を思ってくださるとは嬉しゅうございます」

守られているだけの大人しいお姫様ではないと当初から思っていたが、ここまで行動的だとは思わなかったが、賛美する竜騎士だった。


「まず手始めに、こちらから仕掛けるわ。どうせ、王宮内に何か仕掛けるつもりでしょう?」

「恐らくはクーデターを仕組む可能性が」

「なら、それを利用するわ」


相手の裏の裏をかいでリリアーナは相手の策に乗る事にした。

それが作戦第一弾だった。

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