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第二章

24.邪悪なガイアン

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王宮に招かざる客が訪れた。

名をガイアン大公。


「久しぶりですな殿下…いや、竜帝陛下と呼んだ方がいいですかな?」

白々しく言うこの男はイサラにとっても忌むべき存在だった。


「ご無沙汰しております。まさか王宮に…帝国にいらっしゃるとは思いませんでした?あの日以来姿も見えませんでしたので…てっきり地上に巣を持たれたのかと」

「ご冗談を」


互いに笑顔を向けているが、目が全く笑っていなかった。
腹の探り合いをしているのだから当然と言えば当然であるが。


「風の噂で人間の娘を娶ったと聞きますが」

「世界樹のお告げと、我が帝国の守り神より選ばれた姫君です、とても美しい姫ですよ」

「ほぉ?よりにもよって人間の姫と…獲物を妻にするとは。まぁ、陛下の血肉になるのであれば嬉しい限りですな」


((この男!))

イサラは既に目の前の男を絞め殺してやりたい気分だったが必死で理性という名の鎖で抑え込んでいたが、背後に控えているミケルやロッテンマリは耐え切れなかった。


(よくもまぁ、抜け抜けと)

(野蛮だ!野蛮すぎる!)


竜族としての誇りすらないこの男とこれ以上言葉遊びをするのだけでも不愉快だった。


竜族の中には恐怖政治や、弱き種族を力でねじ伏せ無理矢理服従させることこそ強さの象徴だと思っている竜がいる。


その代表たるのがこの男だ。


「随分と面白冗談ですね?僕は妃を食隙はありませんよ。僕の妃として、竜后として迎えるつもりです」

「人間を竜の皇后に…くっ…ははははっ!なんと異なことを申されるのか。下等な種族で空も飛べぬ出来損ないを正妃迎えるなど正気の沙汰ではありませんな!我らの血肉になるぐらいしか価値がないと言うのに」


「そうでしょうか?」

「は?」


既に怒りは最高潮に高まっている側近達は剣を握りしめているが、イサラは冷静だった。


「愛する者を得る喜びを。番を持つ事の喜びを叔父上は知りませんでしたね?気の毒です」

「何?」

「番はおろか、婚約者に逃げられた叔父上は、長い時間を一人で過ごされた故にそのような寂しい考えをなさるのですね?海皇陛下とは異なり貴方はずっとお一人…だからそんな考えしかできない。御気の毒です」


「何だと!この私が気の毒だと!」

最初こそは冷静に話をしていたように思えたが、先に感情的居なったのはガイアンの方だった。


「おや、失礼。言葉が過ぎました…僕は今、これ以上無い程幸福だったので」


うっかり惚気てしまったと笑みを浮かべるとガイアンは歯ぎしりをした。


(おのれ若造が!)


イサラを傷つけ侮辱してやろうと思ったのに逆に馬鹿にされてしまったのだった。


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