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第二章

23.兄への思い

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パイドラの暗殺計画が続行する中、不幸の手紙が続いた。


「陛下、最悪な事態になりました」

「叔父上か」

「知っていたんですか!」


手紙を持った竜騎士隊長であり、竜帝の親衛隊を率いるミゲル・サイモンは驚く。
まさかすべて予測していたのかと思ったが。


「今朝、花占いをしたんだよ」

「花占い…」


((何やってんのこの人!!))


この非常時に花占いとか正気ではないと誰もが思っただろう。


「普通は片思いの乙女がする占いですが」

「でも、当たるんだよ…実際来たよね」

「まぁ、そうですか」


どうしてこうも転んではタダで起きないのだろうかと思う今日この頃である。


「はぁー、次から次へと面倒な事ばかり。姉上にも早々にお帰りいただきたいのに…無理に帰せば色々面倒だよ」

「帰るわけないでしょう?ここに送り込んで来たのがあの方なのでしょう」

「叔父上は未だに竜を統べる力を持っている。無暗に戦えば天空の竜達を悪戯に傷つけるから戦争はしたくないな」

「お気持ちは解りますが…」


同じ竜族同士が争うことに意味がない。
元から平和主義者だったがや無負えない場合は強硬手段に出る残酷様も持ち合わせていた。


しかし…


「白百合には帝国を嫌いになって欲しくない。好きでいて欲しい」

「陛下…」

「何より兄上に託された国だ。焼け野原にしては兄上に顔向けができないよ」


大好きな兄だった。
誰よりも強く優秀で、国を思う素晴らしい竜だった。

誰からも忘れられ、憂さ晴らしの道具にされていたイサラ。
死んでも喜ぶ者はいても、悲しむ者等いないと罵倒され続けた幼少期。



『兄上…ひっく、ひっく…兄上と母上が!』

『また殴られたのか!』

『お前なんて死ねばいいって…生まれてこなければいいって!』


ズタズタに引き裂かれた心。
母にすら疎まれ、父は見て見ぬふりで毎日辛かった。

けれど――。


『私はお前がいてくれてよかった…お前は私の自慢の弟なのだから』

『兄上…』


泣いてばかりのイサラを常に庇い守ってくれた。


ずっと小さな背中で守られて来た。


だから今度は守る番だと思った。


「僕はここを守るよ…そして大事なお嫁さんを傷つけさせない」

「陛下」

「あの時は幼過ぎたんだ…兄上に守ってもらっているだけだった」


けれど今は違う。

今は守るべきものがたくさん増えた。


だから守る為に戦う覚悟もできていたのだった。

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