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第二章
19.計画は慎重に
しおりを挟むパイドラが暗殺計画を企て居ると知らずに、リリアーナは呑気に釣りをしていた。
「釣れないわ」
「今日は良くない日ですね」
「残念だわ」
普段ならば大量なのに。
沢山魚を釣って、イサラに食べさせてあげようと思ったのに。
「ではそろそろ…」
「フリーダ殿、女官長が至急来て欲しいと伝言を仰せつかってまりました」
「え?ロッテンマリア様が…しかし」
「とても大事な用事だとの事です」
現れた侍従にフリーダはリリアーナの傍を離れるわけには行かず困るも。
「私がその間お傍にいるように仰せつかりました」
「貴方が?しかし専属の護衛騎士ではありませんのに」
「ディーン様は陛下と大事な任務に就かれてます」
侍従の言葉に違和感を感じる。
竜騎士団の副団長であるディーンは責任感の強い男だった。
緊急であるとしても、リリアーナの護衛を直属の部下以外に任せるなんてありえないとフリーダは思ったのだが。
「大丈夫よフリーダ。きっと陛下の公務に関する事だわ」
「ですが…」
「ここから宮まですぐだもの。言って来て」
「申し訳ありません」
渋々であるが、フリーダは傍を離れることにした。
そして代わりの侍女と侍従と共に宮に向かうことにしたのだ。
(フン、愚かな)
(このまま森でその体を汚してくれるわ!)
侍従と侍女に化けたのはパイドラの手の者だった。
宮に戻る不利をして森の奥に進み、そこで雇っている男にリリアーナを襲わせるのが第一作戦だった。
「あ、ウーパンに餌を忘れていたわ」
「はい?」
「今から行きましょう。すぐ傍の池にいるの。ウーパン!」
大きな声で名前を呼ぶと。
「へ?」
「ぎゃああああ!」
池から顔を出したのは巨大な海馬だった。
「フー!」
大きな口を広げて牙を見せる。
「ほーら。ご飯だよ」
子魚をぽいっと放り投げるとキャッチする。
「ほらもっとお上がり」
「妃殿下!」
「あ」
魚を投げようとするも。
「ぶっ!」
傍にいた侍女の頭にぶつけてしまうと。
パク!
「ひぃぃ!」
ウーパンは一口で飲み込んでしまった。
「あ、食べちゃった」
「そんなあっさり!」
「大丈夫よ、飲み込んですぐなら出してくれるわ」
「そうですか…」
侍従は冷や汗をかくも。
「ゲプッ!」
「いっ…今、ゲップを」
「ゲップしたらダメだわ。もう溶けているかも」
「溶けた…」
真っ青な表情になる侍従はガタガタ震えた。
(ありえない…普通にないだろ?)
平然と言ってのけるリリアーナに正気かと思ったが、背後に気配を感じた。
「あー、危ないわ」
「え?」
背後に大きな影が見えたと同時に。
パク!
侍従は食べられてしまった。
その後二人は廃人のようになって池の傍で発見されてしまった。
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