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第二章
18.復讐の塊
しおりを挟むずっと存在を無視され、誰からも愛されることなく虐げられていたはずのイサラが笑顔を浮かべていた。
(ありえないわ!)
抵抗する事もなく、飼い殺しになるのが運命だと思っていた弱気存在のイサラとは正反対だった。
嬉しそうに微笑み、鏡に映るリリアーナに愛を囁く姿はパイドラにとって屈辱的だった。
前皇帝とパイドラは政略結婚で、互いに利益を追求した仲だった。
他にもお気に入りの愛人は多かったし、二人の間に夫婦の絆は勿論、信頼関係など存在しなかった。
パイドラは竜妃、後に竜后になる為だけに利用していたのだから。
愛情もなければ情など存在しなかった二人は、一度も夜を共にする所か、手を握る事もない。
何時も当てつけのようにお気に入りの愛人を囲んでは、パイドラを侮辱し。子供できない女だと侮辱されていた。
しかし、貴族や皇族の家庭環境はそんなものだった。
正妃は家柄だけを重視、子供を産むのは側室の役目だとされていた。
海皇のように妻を一人にしている事の方が珍しかったのだ。
パイドラの父も同じで妻や娘など所詮は自分がのし上がる為の道具でしかなかったのだ。
だからこそパイドラは女としての栄華を望む、天界を支配してやろうとも思った。
けれ度その夢は一瞬で崩れた。
夫は即位して一年も満たない内に亡くなり、元より夫婦仲が悪かった事で残し物は何一つなかった。
廃妃となったパイドラは帝都から離れた辺境地で空しい日々を過ごしていた。
その間にイサラは新たな妻を迎え、穏やかな日々を過ごしていたと思うと腸が煮えかえっていた。
(人間の小娘を妃に迎え…あんな幸せそうに!)
他人の幸せが許せないパイドラは何が何でもイサラを不幸のどん底に落としてやりたいと思った。
(そうよ…あの小娘を亡き者にしてやればいいわ)
幸いにも、居場所を隠しているようだが、魔力を感知する能力はある。
食事に毒を忍ばせて毒殺すればいい。
「お前達、すぐにあれを用意せよ」
「え?」
「あの下等生物に竜族を汚されてはならない。すべては帝国の為だ…赤蜘蛛の毒を」
「かしこまりました」
赤蜘蛛の毒とは、巨人族ですら苦しめる猛毒だった。
人間ならば少し飲んだだけで即死になるのだが、パイドラはただ殺すだけでは面白くないと思った。
「より醜い姿でジワジワ殺して…血を吐いた亡骸をイサラの寝所に置いてくれるわ。その前に男に襲わさせ処女を失わせてやるか」
「まぁ、パイドラ様ったら」
「下等な種族に相応しい死に方をさせてくれるわ!」
嘲笑うパイドラは早速準備をするように侍女に命じるのだった。
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※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。
※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。
1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。
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