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第二章

17.癇癪

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苛立ちを隠すことができず、イライラが酷くなる。
物に当たっても、怒りが収まることなく、部屋で暴れ続ける中、侍女は怯えていた。


「何故…何故、見つからないの!」

「それが、女官達が隠しているようで」

「普通は向こうから挨拶に来るのが常識でしょう!下等生物は礼儀も知らないの!弱気種族が竜族に歯向かうなんて許されないわ」

「はい、その通りでございます」


椅子を蹴り飛ばし、テーブルを殴り、壁にを何度も殴り続けた所為で穴が空いてしまっていた。
部屋がめちゃくちゃになってもパイドラは気にすることなく暴れ続ける。


「パイドラ様、どうか…これ以上は」

「私に指図する気?何様の」

「きゃああ!」


侍女の一人に咎められ、自尊心の強いパイドラは侍女を殴り顔を鷲掴みにする。


「おっ…お許しを」

「お前如きがこの私に指図するなんて万死に値するのよ」


「あああああ!」


手から炎を出し侍女は痛みに耐えきれる悲鳴を上げるも。


「醜い女は私に相応しくないわ。去りなさい」

「あ…ああ」


顔には大火傷を負い、その場に倒れる。


「そのゴミを捨ててきなさい」

「はい」


誰も逆らうことはない。
竜族では強い者には絶対服従する習慣がある。

故に、逆らうことはないのだ。


(ああ…不愉快だわ!)


侍女を使って憂さ晴らしをしても気は張れない。
イサラの態度が許せず、耐え切れなかったパイドラは何をしても気がまぎれない。


「少し出るわよ」

「はい」


(私が直々に命じてやるわ…逆らうなんて許さないわ)


パイドラは昔のイサラならば少し脅せば従うだろうと思っていた。
他の女官もつけ上がっているが、力の差を見せればいいのだと思っていた。

多少抵抗しても痛めつければいい。
竜騎士以外は、非力な竜でしかないのだからと思っていた。


「――!」

「…で…」


話し声が聞こえ、イサラが執務室で誰かと話しているのが聞こえた。


(この私に機嫌を伺わず、随分と偉くなった者ね?)


気配を消して執務室の方に向かうと楽しそうに話す声が聞こえた。


「陛下、そろそろ執務に」

「本当に厄日だ。何であの女が王宮に来るんだ…僕の可愛いお嫁さんが汚される」


(は?)

姿は見えないが、パイドラを侮辱するのには十分だった。


「あの出来損ない風情が…この私を馬鹿にして!」

「なんて事ですの。竜后陛下となるパイドラ様に…あの女なんて!」


傍付きの侍女も怒りを覚えている。
彼女達の怒りの矛先はイサラよりも顔も知らない人間の竜妃に向けられていた。



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