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第二章
15.前妃への対応
しおりを挟むパイドラの傲慢な態度に女官達は頭を抱えるも、女官三人組はリリアナ―ナに危害が加わらないように徹底した。
竜騎士達もパイドラに対して大人しく従っているように見えるが、あくまで態度は紳士的に振舞うだけで従う気は毛頭なかった。
そんな態度が見え隠れする中、パイドラの侍女はこれ見よがしに女官に文句をつけた。
「前妃であるパイドラ様にこのようあお粗末な茶菓を出すとはどういうことです」
「こんな品のない茶器を!」
パイドラの我儘に付け加え、傍付きの侍女までもかなり横暴だった。
しかし…
「それは申し訳ございません。でしたらお飲み物は下げさせていただきます」
そう言いながらロッテンマリアは、全ての茶器にお菓子を下げるも、代わりの物を出すことはなかった。
「ちょっと…」
「王宮の茶は気に入らない様子ですので」
「はぁ?」
代わりのお茶を用意すると思っていたら、出されたのは水だった。
「茶が気に入らないならば、水しかございませんわ。どうぞお好きにお飲みくださいませ」
「ふざけているの?」
「いいえ、茶が飲めないと仰せになりましたので水をお持ちしました」
きっぱり言い放つロッテンマリアは笑顔だった。
遠回しにお茶が飲めないなら水でも飲んでいろと言いたげだった。
しかも出された茶器は一応客用であるが、二流品の物ばかりだった。
「茶器も上物があったでしょう!」
「申し訳ありませんが、あの茶器は急な来客の方にはお出しできません」
「なっ!」
遠回しに客人として迎えていないパイドラ達に出す気は一切ないと告げていた。
「ロッテンマリア…貴様!」
「あらあら、大きなお声を上げてどうされましたか?」
「白々しい!貴様は私を馬鹿にする気?」
「滅相もございませんわ。急なご訪問でも心からおもてなしをさせていただきましたわ」
変わらない笑顔で告げるも内心では思っていた。
(門前払いしないだけ感謝なさい、この阿婆擦れ妃が!)
本来ならば顔も見たくないと思っていた前皇帝の妃のパイドラには恨みがあった。
我が子同然のように愛情を注いできた第一皇子に対する侮辱、そしてイサラを散々苛めた過去は消えない。
散々な態度を取りながら、いざ帝位がイサラに移ったと思えば自分を妃に迎えるのが当然と言う態度が許せなかった。
だからこそ、この部屋に留め置き監視をしていた。
部屋を出る時も竜妃宮には行かせまいと徹底しているし、決してパイドラを客人として持て成す気はなかったのだ。
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