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第二章
9.地上の竜
しおりを挟む人間だけでなく他の種族にも階級制度が存在する。
ただし、生まれだけで特権を得る人間とは異なり竜族は力を見せることで下剋上が簡単だった。
地上を守る地竜の先祖も同じだった。
「レッドドランゴン?」
「ええ、赤い竜でございます」
午前中の講義で、竜族の種族について学んでいたリリアーナはとある竜に興味を示した。
海竜とは随分と異なる容姿で真っ赤な竜だった。
「地上最強の恐竜と呼ばれた方でして、地上に住まう弱気種族を庇護されております」
「へぇー…かっこいい」
リリアーナの領地では多くの魔獣はいても竜に直接会った事はなかった。
聞けば人間の国から遠く離れた場所に国を作り、静かに暮らしていると聞かされる。
精霊のように強い魔力を持たない妖精や、下級魔族は人間から襲われる事を危惧した結果、静かに暮らせるようにしたとか。
「私も炎竜陛下と直に会った事はこざいませんが」
「え?炎竜様というの?」
「ええ、火炎放射を放ち、一夜にして一刻を火の海にする程の巨大なお力を持つ事からそうよばれております。お国では凶悪な地竜を従えておりますので我ら天界に住まう竜よりも体が大きいようで」
「恐怖と巨大な竜…それで恐竜族とよばれているんだ」
今でも竜族の体格は大きいと思うが、もっと大きいとなればどんな大きさだろうか。
「大地を守護ずる竜ってかっこいいなぁ…しかも弱い種族のヒーロー。素敵」
「妃殿下ともあろう方がなりません!」
「えー…」
ロッテンマリアは真っ青になりながら説き伏せる。
子供のようあ憧れであろうが、竜帝陛下の妃となるリリアーナが他の竜族に憧憬を抱くなどあってはならないと思った。
そしてこんな事をあの頓珍漢で天然竜帝が聞けば何を言い出すかと想像するだけでも恐ろしい。
…が、その予測はその日に現実となった。
「陛下、何を飲まれているんです」
自室に執務をしながら先ほどから休みなく危険な色の飲み物を飲んでいた。
側近は怪しげな物を飲むイサラに何を飲んでいるのか尋ねると。
「赤蜥蜴の肝をつぶした酒だ」
「陛下!なんて物を飲んでいるんです!」
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「僕はもっと大きくなりたいんだ!そうだマムシの肝の酒も飲もうかな…そしたら僕はムキムキになって大狒々になれるかも」
真っ青になる側近は今日も暴走するイサラを必死に止めに入る。
どうしてこうも、毎日面倒事を起こしているのかと文句を言いたくなる。
しかし、イサラが奇行に励むのは大体決まっているが、一応聞いてみたのだった。
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