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第二章
7.乳母の不安
しおりを挟む長い間いがみ合っていた天界と海界に終止符が打たれた事によりクリステリア帝国に変化が訪れた。
ずっと枯れ木だった白銀の大樹が息を吹き返した。
これまで魔力を失っていたのだが、生まれ変わったかのように強い輝きを放ちだした。
同時に黄金の大樹も輝きを取り戻した。
そのおかげで世界樹も輝きだし、葉ができ芽が出始めたのだった。
そのおかげで海は以前よりも深い青色に染まりエメラルドのように輝き。
荒れ放題の珊瑚も再生し始めた事により、完全復活したセイレスは深海の女神としての威厳も取り戻すことができた。
「ああ…なんて事でしょう」
「ええ」
朝一番からロッテンマリアは困り果てていた。
女官三人組もリリアーナの身支度をしながらもため息が尽きない。
「どうして困るの?いいことづくめじゃない。珊瑚が枯れると海の生き物は死んじゃうし」
「海は全ての命と繋がっています。あのまま珊瑚がすべて枯れたら我が帝国も危うかったでしょう…ですが、天界と海界が再び同盟を結んだとなれば色々厄介なのです」
「敵対するよりはいいと思うけど?海皇に責められたら帝国は海に沈むわ。絶対勝ち目ないわ」
「姫様ぁ!」
竜妃として言うべきことではないと咎めるも、竜帝としてまだまだ未熟なイサラと千年以上も海を守り続けた海皇の力は強大だった。
その妃も同様に。
「味方になってもらえば他の種族だって手が出せないわ」
「姫様…」
「力を持ちすぎるのが脅威だとしても力がないと国を守れないし、強い種族が弱き種族を守るのは義務よ。他の種族を守り、暗黒竜のレッテルを取るには良い思うわ」
一同はぽかんと口を開けたまま閉じられなかった。
まだ幼いリリアーナがここまで先を見越して考えているとは知らなかった。
普段何も考えていないように見えて考えていた。
「まぁそんなわけでとりあえず陛下の人脈作りに地竜族を味方につけるのが得策だっておじ様が言っていたわ」
「姫様…おじ様とは?」
「海皇陛下」
「「「ああああ!!」」」
あっけらかんと言うリリアナ―ナに本日はロッテンマリアも悲鳴を上げた。
「偉大なる海の父と呼ばれる海の皇帝をおじ様等…なんて恐れ多い事を!」
「パパって呼んで欲しいと言われたけど」
「あの変態少女趣味親父!姫様に何んてことを!」
メイリンだけは偉大なる海の支配者を変態親父だと言って貶していた。
リリアーナが怪我をする原因を作った本人なので今でも恨み言を言っていたのだ。
本人も前で言えば不敬罪にされるのだが。
「はぁー…頭が痛いですわ」
ロッテンマリアは今回の事は遠くない内に三界に知れ渡るだろう。
竜族だけではなく他の種族にもリリアーナの功績が届けば、イサラに敵対する者達に狙われるだろうと危惧したのだった。
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