42 / 128
第二章
6.餞別
しおりを挟む重傷を負ったリリアナ―ナだったが、深海の女神の治癒力によりすぐに回復した。
それまでは良かった。
「さぁ、たんとお食べ」
「はい、ありがとうございます」
何故か海皇とその妻はクリステリア帝国に居座り、リリアーナと仲睦まじく過ごしていた。
「なんて事だ!あの変態親父はリリアーナを愛人にする気か!」
「陛下、言葉をお選びください。相手は深海の王ですよ」
「変態で露出狂だ!やらしい手つきで僕のお嫁さんにアーンをしているぞ!僕の役目だったのに…あんんて酷い男だ。僕の毎日の細やかな楽しみを奪うとは」
柱から睨みつけるイサラは実にカッコ悪かった。
「しかし海皇を怒らせれば帝国は沈みます」
「早く帰ればいいのに…リリアーナも餌付けされてるし」
「そうですね、姫様ははまぐりの虜です」
現在庭で新鮮な貝を網で焼いてもらい、幸せそうに頬張っている。
「どうじゃ?」
「最高です!この蛤最高です」
「中々味の分かる姫じゃ」
「カニ味噌も美味しいです」
海鮮類を堪能するリリアーナを嬉しそうに見るが、第三者から見ればロリコン親父にしか見えない。
なんせ海皇は既に千年以上も生きている大長寿だ。
「姫よ、心から礼を申すぞ。そなたは我が海界の命の恩人じゃ。命がけで偉業を成した事は末代まで語り継がれよう」
「本当に感謝しておりますわ」
「いえいえ…」
お礼にこんな良い思いをさせてもらっているので、感謝するのは自分の方だと思った。
「私はこの通りアシカ令嬢と呼ばれておりますし」
嫁入り前に傷物になったとしても問題ないと思った理由は。
(どうせ食べられるんだしね!その前に陛下に役に立てて良かった!)
後から聞けば、イサラが竜帝になる為には後ろ盾が必要だと聞かされた。
別に狙ったわけではないが、海竜が味方になってくれれば今後は安泰ではないかと思った。
クリステリア帝国に来てからリリアナ―ナ孤独感に苦しむことはなかった。
心細さはあれど、イサラを始めとして、他の竜族達は優しくしてくれた事を心から感謝している。
「海皇陛下」
「パパと呼ぶが良い。おじ様でもいいが」
「はいおじ様」
「うむ」
パパと呼んでもらえなかったことに残念そうにしながらも返事をする。
「陛下をお願いします。あの人は少し頼りなさそうですが、立派になられます。私なんかが申し上げるのは差し出がましいですが…素敵な竜帝になります」
「ああ、なんて意地らしいのでしょう。我らに恩を売ろうとする者は多くとも、このような」
「感動した。任せるが良い…必ずや余があの小僧を立派にして見せよう」
二人は勘違いをしたまま、その一週間後。
餞別代りに銀の竪琴と短い三叉槍をプレゼントして海底に帰って行った。
「ああ、とんでもない物を!」
「人魚の竪琴はとても貴重なのです」
「三叉槍は海皇の子である証なのですが…」
海界を味方につけてしまったリリアーナは後に海皇の加護を得たと言う噂が地上にまで流れるようになり、それと同時にイサラの立場も激変することになった。
38
お気に入りに追加
5,992
あなたにおすすめの小説
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇
愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。
上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。
すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。
そんな末娘に変化が起きる。
ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。
領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。
パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。
彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか?
かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。
個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。
ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。
★初めての投稿小説になります。
お読み頂けたら、嬉しく思います。
全91話 完結作品
勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜
白雲八鈴
恋愛
恋愛フラグより勇者に殺されるフラグが乱立している幼馴染み、それが私。
ステータスは幼女並み。スライムにも苦戦し、攻撃が全くかすりもしない最弱キャラって、私はこの世界を生き残れるの?
クソゲーと言われたRPGゲームの世界に転生してしまったんだけど、これが幼児並みのステータスのヒロインの一人に転生してしまった。もう、詰んでるよね。
幼馴染みのリアンは勇者として魔王を討伐するように神託がくだされ、幼馴染みを送り出す私。はぁ、ゲームのオープニングと同じ状況。
だけど、勇者の幼馴染みを見送った日に新たな出会いをした。それが私にとって最悪の結末を迎えることになるのか、それとも幸運をもたらすことになるのか。
勇者に殺されるか、幸運を掴んで生き残るか···。
何かと、カスだとかクズだとか自称しながらも、勇者のイベントフラグをバキバキ折っていくヒロインです。
*物語の表現を不快に感じられた読者様はそのまま閉じることをお勧めします。
*誤字脱字はいつもながら程々にあります。投稿する前に確認はしておりますが、漏れてしまっております。
*始めの数話以降、一話おおよそ2000文字前後です。
*他のサイトでは別のタイトルで投稿しています。
*タイトルを少し変更しました。(迷走中)
(完結)追放された王女は隣国の後宮で囚われの奴隷?になるー溺愛されて困っています
青空一夏
恋愛
私(ナタリー)はゴイチ国の第一王女。次期女王様として、厳しく育てられた。
一方、妹のエマの特技は、
「ごめんなさい。・・・・・・でも女王様にはお姉様がなるのですよね?だったら、私の努力って・・・・・・報われるのですか?」キラキラしたウサギ目で問いかけて、全ての義務から逃れることだ。
そうすると、お母様(女王様)とお父様も、注意ができないのだった。
ある日、エマと私の婚約者が親しげにしているのを見かけた。
「ねぇ、女王様になりたいわ」
エマの言葉に
「君は今でも僕の女王様だよ」
と私の婚約者のハミルトンが囁いていた。
私は、妹を虐待した罪を着せられて西(砂漠)に追放される。
ねぇ、このまま、砂漠で死んでなんかやらないわよ?
実はこの王女様・・・・・・強かった・・・・・・コメディー路線かも
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
身内に裏切られた理由~夫に三行半を突きつけられたら姑が奇襲をかけて来ました!
ユウ
恋愛
家事に育児に義祖父母の介護。
日々の忙しさに追われながらもその日、その日を必死に生きて来た。
けれど、その裏で夫は他所に女を作り。
離婚を突きつけられ追い出されそうになったが、娘の親権だけは得ることができたので早々に家を出て二人暮らしを始めた。
ママ友が営む服飾店で働きながらも充実した日々を過ごしながらも、なんとか生活が成り立っていた。
そんなある日、別れた夫の姑が恐ろしい形相で乗り込んで来た。
背後には元夫の実家の顧問弁護士も一緒で、私は娘を奪われるのだと覚悟をしたのだったが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる