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第二章
5.海竜族の宣言
しおりを挟む三界不可侵入同盟。
お互いに侵略せず侵略を許さずという条約を結ばれている三界。
天空、海底、地上の三つの世界で住まう竜族達の間で決められた条約は破られることはないのだが、今現在、二人の皇帝が同じ場所にいた。
「姫様ぁぁ!」
「きゃああ!」
クリステリア帝国に戻る事になったリリアーナは痛々しい傷跡が残り、全身包帯を巻かれる姿だった。
傍付きの女官は勿論竜騎士も絶句した。
しかしそれ以上に驚いたのは、海底を支配する海皇とその妃が同行している事だ。
「これは…」
「武器を収めろ。彼等は戦いに来たんじゃない」
「左様だ、我らは姫の傷の手当てを行うべくここにいる。姫は余の恩人であり妃の恩人でもある」
「「「は?」」」
敵対はしていなくとも決して味方とは言えない関係にあった者同士なのに、何故と誰もが疑念を抱く。
「聞けば私の配下が死にかけている所を救ってくれたと聞くではないか」
「はい?」
「偶然にも姫は余が封印されている神殿に入り余を慰め目覚めさせてくれた」
「「「慰めた!」」」
かなり誤解される言い回しをしている事に本人は気づいていない。
「実に満足した。余を心身ともに満足させるとは愛い奴よ」
誤解が誤解を生み、竜騎士達は剣を手に取った。
「心身ともに満足…」
「まさか、姫様に手を出したのか!この変態皇帝!」
「おのれぇぇ!」
純真で清らかなリリアナ―ナを汚したのだと誤解をしたのだが。
ゴンっ!
「うっ!」
「誤解されるような発言はお控えくださいな」
海皇は地面に顔がめり込んだ。
「下品ですわ貴方」
「いや…」
「私の前で許しませんわ。いいですわね?」
「はい、すいません」
海の支配者を片手で捻り上げる深海の女神と呼ばれるセイレスは人魚なのだが、かなりの腕力を有していた。
ちなみに海底ではかかあ天下だった。
「恐ろしい」
「ああ、あの細い腕で…何故」
「神秘だ」
どう考えても、あんな怪力はまずないだろうと思うも、実際に見せられてしまったのだから納得せざるを得ない。
「ご機嫌麗しゅうございますセイレス様」
「久しぶりですわねロッテンマリア。この度は私達の事に妃殿下を巻き込んでしまった事をお詫びします。ですが我ら海竜族は一度受けた恩は忘れません。これより先、私達は妃殿下の後ろ盾となり守る事を誓いますわ」
「えっ…」
クリステリア帝国とはその昔縄張り争いをして敵対関係になったにもかかわらず、リリアーナの後ろ盾になると言ったのだ。
それは、対等ではない。
海竜がリリアーナに敬意を持つと言う事だった。
「私はクリステリア帝国に忠誠は誓いませんがリリアーナ姫が妃殿下となるならば話は別ですわ。彼女を廃妃しないのであれば後ろ盾になりましょう」
遠回しに、イサラを竜帝として認めると言っても過言ではない言葉だった。
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