上 下
40 / 128
第二章

4.遅れて登場

しおりを挟む




どれだけボロボロになってもリリアーナは折れなかった。
結界魔法で雷を防ぎながら癒しの魔法を使い続け、次第に黒い雷は浄化され消えて行った。


「セイレス!」

「起きてください深海の女神様…貴方の大切な海を守ってください!」


既に立つ事もままならない状態で最後の力を振り絞ろうとした時だ。


「行かん!」

完全に消えたと思った黒い雷はリリアーナを襲った。

(もう結界を保てない…次受けたら!)


既に魔力は限界だった。

「おのれぇぇ!それ以上は許さんぞ」

「海皇様!」

目覚めてばかりで体の自由が利かない海皇は体に鞭を打って前に出る。

「我が妻だけでなくか弱き姫にまで…許さん!絶対許さんぞ…」

今攻撃を受ければ海皇の命は危ないが、リリアーナを犠牲にするよりはマシだと思った。

「姫よ、感謝する」

「え?」

「私はここで消えても、そなたの優しき思いは忘れぬよ」

小さな体でここまでしてくれたのは、リリアーナだけだった。

いや、千年以上前にも一人だけ存在した。


(心優しき乙女よ…感謝する)

目を閉じながらリリアーナの壁になろうとした時だった。


「僕のお嫁さんに何をするんだ!」

「へ?」

竜に乗ったイサラが現れ、即座に強い結界を敷いた。

そして雷は光の壁で防がれた。


「白百合!大丈夫かい!」

「えっ…陛下?」

「なっ…鼻たれ小僧!」


間一髪の所で二人の命は救われ黒い雷が完全に消えた。


「姫よ」

「はい!」

再び癒しの旋律と歌を歌い、強い光に包まれ石造が壊れた。


「セイレス!」


石造が壊れた事により本来の姿に戻った。


「貴方…」

「ああ、本当に良かった。良くぞ妻を目覚めさせてくれた。感謝するぞ姫」

「はい」


既にフラフラのリリアーナはそのまま倒れこんでしまった。

「白百合…ひぃ!血だらけに火傷だらけ!僕のお嫁さぁぁぁん!」

「ああ、何と言う事じゃ。わしが目を離した所為で…死んでお詫びを」

イサラと一緒にかけつけた海亀のタロウがハンカチを噛みしめながら泣いていた。

「後で鍋の具にするから」

「はい、責任を取って姫様の糧になりましょう」

「キュー…」


イサラを乗せてここまで来た海竜は飽きれた声で鳴いていた。


しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...