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第二章
1.消えた妃
しおりを挟むリリアーナが海底に向かった頃、王宮では大混乱となっていた。
「お前達は何をしていたのですか!」
「「「申し訳ありません!」」」
王宮内からリリアーナの姿が見えなくなった頃、イサラは執務を終えた後に新しく考えた焼き菓子を用意してスキップをしながらリリアーナを探したが何処にも見つからなかった。
しばらくは待っていたが、一時間しても部屋に戻ってこなかった。
普段ならお腹がすけば部屋に戻るかシェフ達のいる厨房にひょっこり姿を見せるはずなのに妙だと思った。
その矢先だった。
リリアーナが海亀に攫われたとの報告を受けたのは。
言うまでもなくイサラは真っ青なになって良からぬことを考えただした。
「まさか家出…どうしよう!」
「陛下、何故そうなるんです!」
普通に考えれば海亀にそそのかされて攫わられたと考えるのが普通なのだが、イサラはリリアーナが家出をしたと勘違いした。
「最近、お肉の量を減らしたから怒っているんだ!それともおやつを健康の為に野菜を使ったのがダメだった?でも、砂糖の取り過ぎは体に悪いって侍医に言われたから…」
「「「絶対違います!」」」
そんなくだらない理由で家出するわけがないだろうと誰もが突っ込んだ。
「陛下、姫様は政略結婚で嫁がれたのですよ?好き嫌い等ありえません」
「そうです。例え不本意な形であれど、姫様は国の為に己を差し出した根っからの武人体質です」
「ええ、例えどんなに嫌でもご自分の我儘を通すなど」
家臣達はここぞとばかりにフォローするも、むしろ援護射撃だ。
イサラをこれ以上無い程傷つけている事に気づいていないので余計に質が悪いのだが、彼等は無能ではない。
今回の輿入れもほぼ、国から売られる形だったのでリリアーナの人柄を知らない者からすれば互いに愛情がないと思って当然なのだが。
「お止めください!」
「なんて無神経なんですの!これだから男は!」
「陛下になんて事を!」
即座にイサラを庇い、臣下を睨みつける女官三人組。
彼女はリリアーナの輿入れから今日まで付きっ切りでお世話をしていたので二人の関係が仲睦まじく良好であることを知っていた。
「姫様は陛下とそれはもう、仲睦まじいのですわ」
「そうですわ。執務の合間も鏡で妃殿下の様子を見る程ですわよ」
「食事は絶対お二人でされまあすし、空いた時間は妃殿下を執務室でお茶をする程の溺愛ぶり!カルガモのようなのですわ!」
三人は恐ろしい形相に睨みつけ、失言をした彼等の胸倉を掴んでいた。
「お止めなさいお前達」
「「「ロッテンマリア様!」」」
暴走する女官を止めたのはロッテンマリアだった。
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