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第一章
28.拾い物は巨大亀
しおりを挟むリリアーナは神殿を歩き回っていた。
隣には何故か巨大な亀も一緒引きつれ、背後には小さな亀も付き従っていた。
「うーん、ここは何処だろう?」
「我が主の収める竜宮でございます」
「海の底なのに息ができるとは不思議だわ」
事の始まりは、王宮から少し離れた場所にある海で釣りをしていたリリアーナは倒れている巨大な亀を拾った。
「おお、すごく大きい」
「うっ…お腹が」
傷だらけの巨大な亀はどうやら空腹だったようで携帯している塩昆布を差し出す。
これはアンシー辺境地から持ち込んだお菓子だった。
海岸沿いにあるアンシー領地は海産物が豊作だったので海藻を乾燥して食料にしていた。
この昆布もその一つだった。
「ほーら、たんとお食べ」
「うー…」
口に昆布を入れると口を動かしもぐもぐ食べる巨大な亀は息を吹き返す。
さっきまで虫の息だったのに元気になったのだ。
「ああ、なんと甘美なる味じゃ。この昆布は!」
「亀さん、どうして倒れていたの?」
「貴女様は!」
巨大な亀はリリアーナを見てすぐに膝まづいた。
「私は海底に住まう海亀のタートルズ族の長のタロウと申します。貴方様は命の恩人でございます。どうかお礼をさせていただきとうございます」
「別にいいんだけど」
「先行きの短い年寄りの願いを聞いてくださりませんか?」
弱弱しい表情で見つめられると弱かった。
特にアンシー家では年長者は敬い、お年寄りは仙人様という考えがある。
「解りました」
「では、私の背にお乗りください」
「え?乗るの?」
亀の背中に乗るのは初めてだと思ったリリアーナだったが。
「しっかりおつかまりください」
「わぁ!」
海亀のタロウの首にしがみ付きながらそのまま海の底に潜って行こうとしたのだが――。
「姫様?」
「あ?」
「きゃああ!姫様!何を…」
海の中に潜る直前に女官や竜騎士に目撃されるも。
「ちょっと行ってきます!」
リリアーナは少し散歩に行ってきます!的なノリでそのまま敬礼をして背を向け、海の中に潜って行った。
「えっ…姫様?」
「誰か!姫様が…攫われましたわ!」
この後王宮では大騒ぎとなる事など知らずにタロウと一緒に海底に向かうのだった。
――そして現在に至る。
「冷えててすごく気持ちいけど…暗いな」
キョロキョロ見渡しながら微かに何かが光を見つけた。
「ん?何?」
七本の柱の先に光何かを見つけたリリアーナはタロウの傍を離れ、光の元へ向かった。
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