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第一章
25.竜帝の宝珠
しおりを挟むかつてこの帝国では竜帝の宝珠と呼ばれた妃がいた。
最強を歌う天翔ける竜が最強となった理由は竜帝を最後まで支え続けた妃の存在があったからだ。
宝珠と呼ばれる程の価値を持ち、自尊心の欠片でもある竜を跪かせた程だと伝えられている。
人間とは異なり竜は真の番を得ることで一人前となり。
番は竜を支え守る存在だった。
今でこそ番の価値を間違えているが、番とはただの伴侶ではない。
天から命じられた伴侶でもなく、心から慈しみ合える伴侶でもあるのだ。
竜帝を守は宝珠の役目。
そして宝珠を包み込み危険から守るのが竜の役目でもある。
イサラの父も兄達も表向きの番を得ても真の番を得ることはなかった。
だからこそイサラには真の番を得て、竜帝となって欲しい。
ロッテンマリアは厳しくしながらイサラの幸福を誰よりも願っていたのだ。
「姫様を少々殴りましたが…人間にしては随分と頑丈な方でしたわ。少しばかり本能が出てしまいましたが」
「本来ならば追放だけで済みませんよ。まだ正式な竜妃でないからいいものを!」
「役目を果たせられるならこの身が朽ち果てようとも構いませんが…ただ試すだけの為に殴ったわけではありません。邪気を払いました」
「邪気?」
「ええ、姫様の周りに呪いがかけられておりましたわ」
竜騎士達は絶句した。
人間に呪いを仕掛けるなんて正気の沙汰ではない。
魔力が少なければ邪気の飲み込まれて、邪心となってしまう可能性もある。
「黒い魔力でした…幸いにも姫様は守りの力が強い故に問題にはなりませんでしたが」
「誰がそんな罰当たりな真似を!我が主のお妃様に手を出すとは万死に値する!」
竜騎士達は主に忠実な騎士だったが、元は竜なので血気盛んだった。
理性を失えば最後は暴れ竜になることもあるのだ。
「あの自称聖女、実に怪しいですわね」
「まさか…」
「私は姫様からは白き巫女様に通じるものを感じましたが、あの邪悪な塊の女からは神々しさの欠片も感じませんでしたわ」
竜族達は人間の中でも加護を持った者や神の愛し子等を見れば感じるのだが、サンドラを見た時聖女なのかと疑いの目を持った。
「あの自称聖女に神聖なる魂があるとは思えませんわ。目が病んでいますし」
「人間側の神殿は価値観が違うのでしょうか」
今でもサンドラを聖女だとは思っていない。
だが、仮に聖女だとしても長年の勘が告げていた。
サンドラを竜の国連れてくるべきではないと思っていた。
そしてその勘は間違いではないと遠くない未来に知る事になるのだった。
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