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第一章

23.朝食

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出会い頭に殴られ、鳩尾を食らわせられるというありえない挨拶を受けた後。


何時ものように二人で食卓を囲んでいた。

「白百合、ごめんね?」

「大丈夫です。私は巻いたオムレツも好きです」

「そうか、良かった…じゃないなくてね?」


今日の朝食は和の国の料理だった。
オムレツとは異なる料理であるが、あっさりした味付けの卵料理の虜だった。

「このお箸というの便利ですね」

「姫様、柔軟性が高すぎますね」

「ええ、少しお教えしただけで」


フォークとナイフが慣れている者にとってお箸は使いにくいのだが、リリアーナは器用だったのかすぐに覚えた。

竜の国では東洋の国の文化を大事にしている。
その為清の国の礼儀作法も学ばなければらないのだが、リリアーナのように東洋の国の文化を知らない国の者は魔なんだからと言ってすぐにできるものではなかった。

その点で言えばリリアーナは実に優秀でロッテンマリアを喜ばせたのだった。

「このお箸なら、ロッテンマリアさんの尻尾もイチコロです」

「白百合!素晴らしいよ。流石僕のお嫁さんだ!」

「違いますからね!陛下!」

本当にブレない二人だった。
リリアーナに至っては、あれだけロッテンマリアにボコボコにされてもへこたれていない。

「やられて泣き名入りなんてありえません!今度は私が反撃する番です!」

「姫様…反撃とは」

「次は尻尾を防いで見せます。ですからエネルギーを補給しないと」

「うんうん、これでこそ僕の竜妃だよ!その為には沢山食べないとね」

そう言いながら特別に用意させた竜の絵が描いた茶碗にご飯を山のように盛り、差し出す。

「白いですね!」

「お米のご飯だよ」

「ピラフとは違いますね…美味しい」

リゾットやピラフに使われているような米だったが、味が全く違う。
触感も素晴らしく、お米に夢中になるリリアーナはパンよりも大好きになった。

「この野菜も美味しいです」

「これはほうれん草のお浸しだよ」

「さっぱりしてて飽きないです。それにこの魚の塩焼きも」

「朝一番の新鮮な魚だよ。カルシウムは大事だからね」


この時、女官三人組はイサラから神々しい光が見えた。

同時にイサラが割烹着を着たお母さんに見えた。


「ああ陛下…」

「既に母の鑑になっていますわ」

「ええ、竜帝から遠ざかっています」

元から竜帝らしくない性格であったが、公の場ではそれらしく振舞っていた。


だが、リリアーナが来てから主婦業に磨きがかかり。
既に母親の鑑となっていたのだった。


「本当に大丈夫でしょうか…戴冠式まで」

「ええ、それが少し心配ではありますわね」


「今は見守りましょう」


若い竜帝と幼過ぎる竜妃を見つめながら女官達の不安は消えないままだった。

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