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第一章

17.聖水と演奏

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クリステリア帝国は大樹が多かった。
世界樹を中心に、いくつかの大樹が植えられており、その大樹には聖花が咲くと言われている。

しかし現在は花一輪ですら咲かない状況だった。
その所為で世界樹にも花が咲かないと言われており、一番の悩みは世界樹を支える陰と陽の大樹だった。

白銀の大樹と黄金の大樹と呼ばれていた。


双方の大樹により世界樹は支えられていたが、長年花も咲かせない事から枝が枯れ始めている。

このまま大樹が枯れる様なことがあれば世界樹も枯れてしまう。
なんとしても防がなくてはならないのだが、竜族の中でも魔力の強い姫や巫女達でもどうにもできなかったのだ。



その枯れた大樹の下にて。


「はぁー、やっぱりここが一番気持ちいわ」

何故か白銀の大樹の下でくつろぎ、本を読みながらイサラのお手製のおにぎりを食べていた。

「このおにぎりという手づかみ料理も最高」


傍には重箱並みの大きさの弁当箱に、お茶までもある。

「ギャウ!」

「でしょ?陛下は良いお嫁さんになるよね」

膝に飛竜の子供を乗せている。


「それにしてもこの大樹、水が足りないのかしら?」

「ギャウ?」

「だって、枝がこんなに酷いわ」


綺麗な銀色の大樹なのに所々枝が枯れている。
大樹の中心部分には傷もあり痛々しさを感じるリリアーナはせめて大樹に息吹を与えて上げたかった。


「お水が足りてないのね。聖水を上げましょう」

そう言いながら如雨露を取り出し、水を注いで手をかざす

リリアーナの魔力を込めて聖水にして水を与える。


「さぁたんと召し上がれ。私の魔力の入った聖水だよ」

子供に言い聞かせるかのように水を与える。

「聖女様には及ばないけど、領地の御神木を癒すのは私の役目だったもんね」


水を上げた後はハープを取り出す。

「最後はやっぱり音楽よね」

植物を育てる時には必ず音楽を奏でるリリアーナ。
領地で世話をするときは話しかけてながら育てていたのでリリアーナが育てた植物は生命力にあふれているとも言われていた。


特にお気に入りなのは人食い花ラフレシアだった。

「いい風が吹いて来た。綺麗な花弁」

風が吹き白い花弁が舞っており空を見上げる。


「早く元気になりますように」

心から祈りを捧げ、治癒師としての魔力を注いだ音楽を一時間奏で続けた後に、事態は一変した。




「これは…花弁?」


近くを通りかかった一人の女官が空を見上げていた。
光の反射でよく見えなかったが、白い花弁が虹色の輝いていたのだ。


「白銀の大樹と黄金の大樹が!」

花も咲く事すらなかった二体の大樹に影響が起きたのそはその日からだった。


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