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第一章
16.竜騎士の願い
しおりを挟むクラテリス騎士団。
別名竜騎士団とも呼ばれる彼等は皇帝の傍付きを任される程優秀な騎士だった。
お供に竜を従え、常に空を飛びながら一定の距離から皇帝を護衛を任され、傍にいることも許されていた。
彼はイサラが幼少期の頃から傍にいたので主従関係というよりも我が子のようなものだった。
生まれた時から冷遇され、不要な存在とされ。
時には、異母兄弟から疎まれ毒殺をされそうにもなるが、誰よりも優秀だった。
剣術は勿論の事ながら、学問にも優れていた。
ただ竜族として欠けている所があった。
それは竜族としての本能が足りない事だ。
根が優し過ぎる所為か争いを好まず、他者を踏みつけてまで生き延びる執着心や弱きものを圧倒する事ができない。
その理由は物心つく頃から虐げられたがゆえに、暴力を嫌っていた。
補足すると実は女性も苦手だったりする。
特に妖艶な女性や化粧が濃い女性を見ると怯えてしまう傾向がある。
しかし帝位に就く為には女性が怖いなんて言ってられない。
だからこそ、所在竜帝である白竜の御霊に言葉を賜り世界樹によって選ばれた乙女を妃に迎えることにしたが、当初は不安しかなかった。
もし、性悪ならば困る。
しかし、竜に怯えるようならばもっと困ると思いきや。
候補として送られたのは予想外の人物だった。
まだ成人もしていない幼さが残る少女で少しコロンとした体格だった。
竜族達にとって美醜はそれ程重要ではなかった。
大事なのは本質を見抜く能力と、どんな相手にも物おじせずにいられるか。
体格が少しばかり太っていてもそんなことは二の次だった。
リリアーナは少しばかり好奇心旺盛であるが、竜騎士の竜達に対しても友好的で恐怖心を抱く事もなかったし。
竜騎士の前で負の感情を出すことはなかった。
これまでの婚約者候補では、妙齢の女性は竜族の婚約者になれば不足を言うか嘆くかの二つだった。
なのに一切の不満を口にすることもなかった。
その点で既に及第点だったが、更に驚いたのは虹の橋が反応した事だ。
天と地を唯一結びつけると言われている虹の橋は、人間が橋を通る際に相応しいものであるか判断される。
もし虹の橋が認めなければ弾かれてしまうのだが、虹の橋はその時、銀色に輝いたのだ。
まるでリリアーナを歓迎しているかのようだった。
そして竜騎士に従う竜や竜馬達も何故かリリアーナに懐き鳴き声を上げている。
これには流石に驚いた。
竜騎士の相棒である竜達は、気位が高いのだ。
故に他者。
特に他の種族に懐くなんてことはまずない。
にも拘らず懐いた時点で、リリアーナは妃の条件を満たしていた。
その後もこっそり様子を伺うも。
イサラの竜帝としてまずありえない行動でも、リリアーナは文句ひとつ言わず受け入れるどころか一緒になって楽しんでいる。
夫婦のやり取りは思えず、まるで親子のようなやり取りであるが。
これまでの妃候補に比べればずっと良いと思えた。
ヘタレで少女趣味で頭の中は少し乙女的であってもイサラは竜族の長となる者。
できれば幸せになって欲しいし。
竜妃は竜帝の宝珠となる存在でなければならない。
夫を愛し支える役目をリリアーナならば果たしてくれるのではないかと期待を込めたのだが、彼等の予想とは裏腹に事態は意外な展開に進んだ。
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