19 / 128
第一章
16.竜騎士の願い
しおりを挟むクラテリス騎士団。
別名竜騎士団とも呼ばれる彼等は皇帝の傍付きを任される程優秀な騎士だった。
お供に竜を従え、常に空を飛びながら一定の距離から皇帝を護衛を任され、傍にいることも許されていた。
彼はイサラが幼少期の頃から傍にいたので主従関係というよりも我が子のようなものだった。
生まれた時から冷遇され、不要な存在とされ。
時には、異母兄弟から疎まれ毒殺をされそうにもなるが、誰よりも優秀だった。
剣術は勿論の事ながら、学問にも優れていた。
ただ竜族として欠けている所があった。
それは竜族としての本能が足りない事だ。
根が優し過ぎる所為か争いを好まず、他者を踏みつけてまで生き延びる執着心や弱きものを圧倒する事ができない。
その理由は物心つく頃から虐げられたがゆえに、暴力を嫌っていた。
補足すると実は女性も苦手だったりする。
特に妖艶な女性や化粧が濃い女性を見ると怯えてしまう傾向がある。
しかし帝位に就く為には女性が怖いなんて言ってられない。
だからこそ、所在竜帝である白竜の御霊に言葉を賜り世界樹によって選ばれた乙女を妃に迎えることにしたが、当初は不安しかなかった。
もし、性悪ならば困る。
しかし、竜に怯えるようならばもっと困ると思いきや。
候補として送られたのは予想外の人物だった。
まだ成人もしていない幼さが残る少女で少しコロンとした体格だった。
竜族達にとって美醜はそれ程重要ではなかった。
大事なのは本質を見抜く能力と、どんな相手にも物おじせずにいられるか。
体格が少しばかり太っていてもそんなことは二の次だった。
リリアーナは少しばかり好奇心旺盛であるが、竜騎士の竜達に対しても友好的で恐怖心を抱く事もなかったし。
竜騎士の前で負の感情を出すことはなかった。
これまでの婚約者候補では、妙齢の女性は竜族の婚約者になれば不足を言うか嘆くかの二つだった。
なのに一切の不満を口にすることもなかった。
その点で既に及第点だったが、更に驚いたのは虹の橋が反応した事だ。
天と地を唯一結びつけると言われている虹の橋は、人間が橋を通る際に相応しいものであるか判断される。
もし虹の橋が認めなければ弾かれてしまうのだが、虹の橋はその時、銀色に輝いたのだ。
まるでリリアーナを歓迎しているかのようだった。
そして竜騎士に従う竜や竜馬達も何故かリリアーナに懐き鳴き声を上げている。
これには流石に驚いた。
竜騎士の相棒である竜達は、気位が高いのだ。
故に他者。
特に他の種族に懐くなんてことはまずない。
にも拘らず懐いた時点で、リリアーナは妃の条件を満たしていた。
その後もこっそり様子を伺うも。
イサラの竜帝としてまずありえない行動でも、リリアーナは文句ひとつ言わず受け入れるどころか一緒になって楽しんでいる。
夫婦のやり取りは思えず、まるで親子のようなやり取りであるが。
これまでの妃候補に比べればずっと良いと思えた。
ヘタレで少女趣味で頭の中は少し乙女的であってもイサラは竜族の長となる者。
できれば幸せになって欲しいし。
竜妃は竜帝の宝珠となる存在でなければならない。
夫を愛し支える役目をリリアーナならば果たしてくれるのではないかと期待を込めたのだが、彼等の予想とは裏腹に事態は意外な展開に進んだ。
53
お気に入りに追加
5,992
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇
愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。
上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。
すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。
そんな末娘に変化が起きる。
ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。
領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。
パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。
彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか?
かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。
個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。
ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。
★初めての投稿小説になります。
お読み頂けたら、嬉しく思います。
全91話 完結作品
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる