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第一章

15.伝説の竜后

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クリステリア帝国は天空の国と呼ばれており、竜族以外の種族も存在していた。


「羽が生えた生き物が沢山」


リリアーナのお気に入りは、竜翼ワインバーンと空のお散歩をする事だった。



…が、通常はまずありえない。
彼等は自尊心が高く、好戦的故に主人と認めなければ背に乗せることはまずない。

クリステリア帝国の皇族や貴族ですら彼等の背に乗れるのは限られた人数で、竜騎士も彼等を従えさせるのに長い年月が必要なのだが。


「姫様!」

「あー、メイリン。お勤めご苦労様」

「なっ…何を」

「お散歩」

真っ青になりながらメイリンは悲鳴を上げる。
常に何か騒動を起こすリリアーナにより、気苦労が絶えなかった。


「お散歩…」

「庭で偶然会ったんだけど、意気投合しちゃって背中に乗せてくださいってお願いしたら快く乗せてくれたのよ!親切ね!」

「姫様…」

もう何も言うまい。
既にクリステリア帝国に来た際に竜馬を懐柔しているが、彼等よりも凶悪なワインバーンまでも懐柔するとはなんて恐ろしいのかと思う一方で。



伝説となっているある竜が愛した姫もまた、人間には懐かない竜達を手懐けていたと聞く。


「もしやリリアーナ姫様は竜后陛下と同じ資質をお持ちなのでは?」

「しかし竜后陛下は、文武両道で政治の才能も素晴らしく、女王の器を持ちし方であり。天女となった方ですわ」

「リリアーナ様にその資質があるかは解りかねますわね…」


クリステリア帝国の礎を築いたと言われる竜后陛下と呼ばれる女性がいた。
彼女は聡明で勇敢であり、女王の資質を持ち合わせており、天空、地上、海底の三つの国の神々を認めさせたとされており、クリステリア帝国では賢妃とも誉れ高かった。


しかし私生活は謎に包まれていた。
伝説となっているが、かつて竜族の存続の危機が訪れた時は命がけで戦い。

時には竜后でありながらも戦場に立つ豪胆さを持ち合わせながらも、慈悲の心を捨てなかった天女のような美しさと女神のような気高さに天使のような優しさを持ち合わせたとも言われている。


今のリリアーナとは似ても似つかないのだが、メイリンはその資質を持っているのではないかと思っていた。


その一番の理由は――。


竜族であろうと色眼鏡で見ることなく物怖じしないリリアーナの行動に、先代竜后に通じるモノを感じていた。



(ですが…)


竜馬に乗ってはしゃぐ姿はあまりにお幼過ぎて、伝説となった賢妃には程遠いとも感じるメイリンだった。



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