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第一章
閑話2.第三勢力
しおりを挟む時間は少し遡り、リリアーナが竜の国に捧げられた頃。
ウィンドル王国は王族派と貴族派以外に中立的な考えを持つ派閥が存在する。
彼等は辺境地出身の貴族であるが、建国前から存在する貴族故に侯爵以上の権力を持っていた。
彼等は王ですら敬意を持って接しなくてはならないと言われていた。
自国を守る力に優れ、彼等がいなければ国土を守ることができないからだ。
そんな彼等は今回の事件を耳にしてすぐに国王に直訴した。
「我が国の癒しの姫を爵位もない名ばかりの女の代わりに差し出すとはどういうことだ!」
「王家は我らに喧嘩を売りたいのか」
「こんなことが許されるか!」
辺境地のミレウス侯爵は辺境地の中でもリーダー的存在であり、中立側をこれまで守りながら国内でクーデターが起こらないように目を光らせていた人物でもある。
「メイデン侯爵と言っても王族の親族にすぎぬ。あの聖女を名乗る娘も、実績もほとんどないではないか…未だに聖女の候補に過ぎないだけで聖女の力にも目覚めておらぬと言うのに」
「勝手に神殿側が聖女を持ち上げておるのであろう…」
「一番許せんのは、あの娘は聖女候補でありながらも節度のない装いをしながら男と舞踏会に参加していると聞く。真面な精神があれば、一年は喪服を着て祈るのが当然だ」
自分の所為で竜の国に生贄されたリリアーナに申し訳ないという気持ちがあるどころからロイドと恋人のように振舞う姿は許されなかった。
他の貴族達も、リリアーナがサンドラの代わりに竜の国に差し出されたと解るや否や、公のパーティーにてサンドラと愛を語り合いいちゃつく姿がドン引きしていた。
元から二人の婚姻は政略的なモノでしかなく、容姿が悪いリリアーナを毛嫌いしていたが、体面を保つためにもそれらしく振舞うのが普通だ。
なのに、リリアーナが生贄になった事をこれ幸いという態度を取っていた。
「建国前よりこの地を守り魔獣との共存を成した、癒しの姫君を侮辱する事は許されぬ」
「王弟殿下の甥だとしても、許されることではない」
「あの若造は何もしておらぬであろう?リリアーナ嬢は幼少期より癒しの姫として戦場にて我らの治癒師として奔走はしているが…あの若造は何をした?」
「ハッ、騎士の才もなく。偉そうに踏ん反りおって」
もしロイドが少しでもリリアーナに情を見せていたのならば、彼等もここまで嫌悪感を出さなかったのかもしれないが、社交界では既に噂が流れていた。
聖女の身代わりにしたロイドは機会をうかがっていたのではないかと。
アンシー辺境伯爵家の領地を乗っ取り、その上で邪魔になったリリアーナを亡き者することを計画していたのではないか。
ウィンドル王国の聖女を守ると言いながらも聖女と情を交わし邪魔な婚約者を体裁よく始末して、リリアーナと婚約の際に得た財や領地は自分の物にしようとした自己中で最低だと噂が流れているのだ。
しかし支度金代わりに差し出された価値ある領地は婚約が解消になれば返上することになっているだけでなく、ロイドの評価はがた落ちになってしまい、尚且つ第三勢力の彼等を敵に回した末路に待っているのは破滅の道しかないのだった。
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