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第一章
7.挨拶はスコッチエッグ
しおりを挟む部屋の中は赤と緑で統一され、異国文化万歳だった。
「待っていたよ。君が僕のお嫁さんだね?まずは僕の手料理を食べて」
「「陛下ぁぁぁぁ!」」
円形のテーブルに飾られたのは見たことがない料理だった。
真ん中には薔薇の花が飾られており、まるで食事をするような席だった。
「エプロン…」
陛下と呼ばれる青年はこれ以上無い程眩しい美形だった。
黒い髪に黒い瞳に白い肌。
すらりと背が高かった。
(なんだこのイケメンは!)
ありえない程の美青年で固まった。
なのに白いフリフリエプロンを着て料理する姿はミスマッチだった。
「陛下…またそのような!」
「今日ばかりはお止めくださいと申しあげましたのに」
「もう終わりですわ…ああ」
女官達は真っ青になり、今にも気絶しそうになる。
「君と一緒にこのスコッチエッグをつつき合いたいんだ」
「なんて素敵な香り」
「僕の手で食べてくれないか」
そう言いながらスコッチエッグを切り分け差し出すと。
「いただきます」
「「「えええ!」」」
ノリノリで身を乗り出し食べるリリアーナに女官は悲鳴を上げる。
「美味しいです。こんなに美味しい料理は初めてです」
「そうか、そうか。じゃあもっと食べて?僕の手から」
「はい」
完全に餌付けされてしまっているリリアーナはされるがままだったが。
「陛下、お止めください。そのようなはしたない真似を」
「けれど人間界ではこうしてご飯を食べさせるんだろう?僕の可愛いシャルロットにもこうしてあげたじゃないか」
「陛下、ペットのペンギンと一緒になさらないでください!」
「失礼な。シャルロットには魚を投げたけど、お嫁さんにはちゃんと丁寧に食べさせたよ」
女官達はそういう意味じゃないと言ったが、されている本人は気にも留めていなかった。
「陛下」
「何かな?僕のお嫁さん」
「そっ…その、もう一つ食べてもいいでしょうか」
既に餌を前にしたお預け状態だったリリアーナは涙目で訴える。
「僕のお嫁さんが可愛い!どんどん食べるといいよ。君の為に用意したんだ」
「ありがとうございます」
二人は仲良く食事会を始めた。
「これっていいのでしょうか」
「良いはずがりませんわ。女官長に知られたら雷が落ちますわ」
「ですが、いい雰囲気ですよ」
「ただの食事会になっているではありませんか!しかも雛鳥を世話する親鳥に…」
女官三人は更に頭を抱える中、二人は彼女達の心中など知る由もなくマイペースだった。
「僕はイサラだよ」
「リリアーナ・アンシーと申します」
「リリアーナか、可愛い名前だね」
食事ですっかり緩み切ったリリアーナは名前を名乗り互いに交流を深めていた。
「この挽肉の料理、すごく美味しいです」
「これは僕と君をメイージして作ったんだ」
「私…ですか」
挽肉を包み込む卵を見てはて?と思うリリアーナにイサラは丁寧に説明をする。
「この挽肉が僕で中の卵は君だよ」
「これは…」
卵を全体に包む挽肉の真ん中にある卵を見て察した。
(私は最後に逃げ場もなくペロリと食べられるのね!この卵のように包まれて!)
(君を大事に包み込んであげられるように考えたんだ)
しかし、リリアーナの発想はあまりにも外れており、イサラの思いは全く伝わらなかった。
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