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第三章雇われ国王物語
23妹の成長に涙
しおりを挟む隣国の知らせは大変嬉しい物だった。
例えるならば娘の成長を涙する父親の心境だった。
「エグ、エグ…立派になって」
「ちょっと、いい加減にしなさい」
新聞の記事を何度も見返しても涙が止まらなかった。
それ程に嬉しかったのだから仕方ないだろう。
「あんなに小さかった二人が立派に」
俺はグレタが立太子した事を知らされはしたが、隠れて不正を働く貴族派を粛正するべく準備をしていたとは知らなかった。
王宮では味方は少なかったが国外で味方を増やしていたのは知っていた。
「彼女はずっと貴方の補佐になるんだって言っていたのよ」
「え?」
「エリンデールに留学していた頃から貴方を守る為に剣術を学び、馬術を学んでいたわ」
「そうだったのか」
まだ小さいと思っていたんだが。
幼くして国から出した母上は国内ではなく他国の文化、政治を学び国内では起きにくいから他国で活躍できるようにとの配慮なのだと思ったが。
「でもあの愚弟と立太子を任された事で容赦が無くなったのね」
「え?」
「言っておくけど、兄弟の中で一番強かなのは彼女よ?まぁ、貴方がいたから大人しくしていたようだけど。綺麗な花には棘があると言うでしょ?」
「気づきませんでした」
俺の中でグレタは何時までも可愛い妹だ。
控えめであるせいか、我儘を言ってくれないのが寂しかったが。
「はぁー…もっと甘やかさせあげたかった」
「十分でしょ」
「リーシェは手厳しい」
可愛い妹をもう少し甘やかせたいと思って何が悪いんだ。
今にして思うが、グレタの我がままなんて些細な物だったのにな。
「これから同盟を結ぶのよ?会う機会はあるだろうし、そんな調子でどうするのよ」
「善処します」
そうだな。
同盟を正式に結んだ後に、ランタニア王国は従国となる。
「しかし、ここまでの条件を受け入れてもらえたわね」
「それはナツメの手腕だな」
本来ならば対等な関係で同盟を結ぶのだが、ランタニア王国は先代からの赤字や貴族達の贅沢ぶりで困窮していた。
日に日に国は圧迫され、感染病、干ばつ。
物価の高騰にも悩まされていたのだが、エリンデール王国と来なるのは魔力の違いだ。
そして人類以外の種族が共存している事で加護を受けられる。
特に薬草だ。
エリンデール王国には人類至上主義の国ではない薬草が多くある。
現在病に苦しむ民を救うべく、援助金の代わりに薬草を一部渡す事にした。
他に現在どの国でも重宝されているのが砂糖だ。
エリンデール王国ならば上質のサトウキビ畑を作ることもできる。
干ばつの問題を解決しながら作物を作り、輸入という形を取れば援助ができる。
お金は残しておいても食べられない。
食料の方が重宝されるからナツメと相談し結果、金銭でやり取りよりも安全だ思ったんだ。
だけど、それだけで援助としては弱いのに。
何故従国になる事を決めたのだかが解らないでいた。
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